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2021 Fiscal Year Research-status Report

Land / Sea Eurasian Transport and the Formation of Muslim Traders' Diasporic Identity

Research Project

Project/Area Number 21K00819
Research InstitutionDoshisha University

Principal Investigator

向 正樹  同志社大学, グローバル地域文化学部, 准教授 (10551939)

Project Period (FY) 2021-04-01 – 2026-03-31
KeywordsTrade Diaspora / Global History / Holy Sentence / Diasporic Identity / Islamic Inscription
Outline of Annual Research Achievements

2021年度に予定していたデータ収集(アラビア語碑文と漢語史料の横断的分析)に基づく成果は、2021年度公刊の書籍の担当章(日本語)に執筆した。
このほか、中世インド洋貿易やゲニザ文書に関する研究書籍購入、「人類史における移動概念の再構築」オンライン研究会での成果発表(4/17)、日本ゲニザ学会のオンライン研究会・ワークショップへの参加などが主要な活動となった。エジプトのカイロのシナゴーグから発見された中世ユダヤアラビア語文書群、いわゆる「ゲニザ文書」は、本研究が特に関心をもつ9~14世紀のアラビア語文書を多く含み、本研究が行おうとする同時代のイスラム碑文読解のための重要な手がかりが含まれていることが分かった。6月13日(Elisha Russ-Fishbane氏)、10月2日(Elizabetha Lambourn氏)、11月7日(志田雅宏氏)、1月22日(嶋田英晴氏)のゲニザ入門講義では、中世インド洋貿易史家の講義を聞き、参照すべき新たな研究文献など情報を得ることができた。2022年2月17日~21日にかけて実施されたオンライン・ワークショップではゲニザ文書専門家のRachel Hasson博士による中世アラビア語の特徴を学習することができた。ヘブライ語で発表された中世アラビア語についての研究成果を知る貴重な機会となった。
なおこれらの入門講義やワークショップは本来対面で実施される予定であり、そのための出張費を計上していたが、コロナ禍のためにすべてオンラインに切り替えられた。実地調査は当初の予定でも初年度には計画しておらず、次年度以降に実施を予定している。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

本研究課題の目標は「ユーラシアの広域交通網の発達がムスリム交易民の超地域的アイデンティティ形成と連動していた」ということを明らかにすること、そして現在のグローバリゼーションのなかでのムスリムのアイデンティティ変容について調査することである。申請時の研究計画に基づけば、2021年度の目標はデータ収集であるが、それについては上に述べたように順調に進んでいる。とくに日本ゲニザ学会の入門講義やオンラインワークショップ参加によって得られた中世インド洋貿易史やアラビア語文書についての知見は従来であれば複数回の国際学会参加によってやっと得られるような貴重なものであり、本研究の進展に大きく貢献している。
その一方で、研究発表や論文執筆を通じてイスラム碑文のデータを新たに整理し直したり、漢語史料(地方志の元朝期任官者リスト)の分析を行った結果、思わぬ発見もあった。ひとつは、本研究の研究対象である13・14世紀泉州(中国福建省)をはじめとする中国沿海部出土のイスラム墓碑の一部は、従来知られていたイランのもののみならず、サマルカンドなどトランスオクシアナの都市出土のものと酷似していることが分かった。また、13・14世紀福建の任官者リストの再集計により、元朝の政治情勢との関連で至治年間にはムスリム名の割合が低く次の泰定年間に増えるという見通しを得た。前者は、中国沿海部出土イスラム墓碑の被葬者はトランスオクシアナ~イラン出身のムスリム・エリート層が中心であるという研究代表者の見通しを裏づけるものである。後者からは、元朝の政治情勢と関わって福建の地方政府でもムスリム名官員の割合が減るという動向が、イスラム墓碑の時期別出土件数とどのような関係にあるのか、という新たな研究課題も生じた。

Strategy for Future Research Activity

研究計画では、2022年8月以降、イスラーム墓碑の特徴分析を開始することとなっており、これを進めることを予定している。しかし、上述のように、漢語文献とくに福建地方志の任官者リストの再集計からも新たな発見があったことから、並行して漢語史料の情報のさらなる集計を行いたい。ムスリムのみでなくウイグル人など他の民族出身者のデータも集計することによって、逆にムスリム任官者の特徴が分かるはずである。また、ムスリム任官者についてもすべてのデータを入力し、時期による増減をグラフ化し、それをイスラーム墓碑の出土件数の時期的変遷と比較する。そして、これらの作業による研究成果を順次、学術論文として発表する(ルール大学ボーフムのEntangled Religionsというジャーナルへの投稿を考えている)。
さらに、地方志に載るムスリム官員の人物伝のもととなる伝記史料にもあたる必要がある。すでに伝記史料の収集に過程で、元朝末期の福建にいたムスリム地方官が、明朝に仕えることを良しとせず「国難に殉じる」例を見出した。そうした事例の詳しい分析によってムスリム・アイデンティティの問題に関して新たな知見が得られると期待される。これらの伝記資料はムスリム・アイデンティティについての豊富な情報を含んでいると思われるので、順次分析を加えながら、内容を翻訳し、本研究の成果報告書など、学術的な成果物の形でまとまった形で発表する。
研究計画では、2023年度からロシアの博物館でのイスラーム碑文調査を予定していた。しかし、現今のウクライナ情勢を考えると、実施は難しいように思われる。研究経過くでは、ロシアでの調査実施が困難な場合はドイツでの調査地としていたので、そちらでの実施を視野に入れる(2019年3月にドイツのベルリン博物館で調査を行った際には、イスラム碑文を所蔵する館は閉館していたが、今はすでに開館している)。

  • Research Products

    (4 results)

All 2021

All Journal Article (2 results) Presentation (1 results) Book (1 results)

  • [Journal Article] 元と南方世界2021

    • Author(s)
      向正樹
    • Journal Title

      アジア遊学 元朝の歴史―モンゴル帝国期の東ユーラシアー

      Volume: 256 Pages: 251ー265

  • [Journal Article] 元・明一統志の非中華世界へのまなざし2021

    • Author(s)
      向正樹
    • Journal Title

      アジア遊学 書物のなかの近世国家―東アジア「一統志」の時代―

      Volume: 259 Pages: 116ー121

  • [Presentation] 東遷したアラブ・ペルシア系舶主2021

    • Author(s)
      向正樹
    • Organizer
      「人類史における移動概念の再構築」研究会
  • [Book] 論点・東洋史学2021

    • Author(s)
      吉澤 誠一郎、石川 博樹、太田 淳、太田 信宏、小笠原 弘幸、宮宅 潔、四日市 康博
    • Total Pages
      378
    • Publisher
      ミネルヴァ書房
    • ISBN
      978-4-623-09217-8

URL: 

Published: 2022-12-28  

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