2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21K00833
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
鈴木 則子 奈良女子大学, 生活環境科学系, 教授 (20335475)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横田 冬彦 京都大学, 文学研究科, 名誉教授 (70166883)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | コレラ / 疫病 / 感染症 / 虎狼痢治準 / 袖日記 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、文政5年(1822)および安政5年(1858)に始まった、二度にわたる幕末のコレラ流行に関する地域史料を分析することを通じて、庶民の<疫病経験>の生活史を明らかにした。特に各地に多く駿河国富士郡大宮町に残されている幕末の日記史料を詳細に分析して、疫病をめぐって日々に変化する心のありようや人間関係、病への対応の仕方など、具体的な個人の疫病経験の復元を行った。 また、コレラ以外の天然痘、麻疹、インフルエンザといった生命に関わる感染症についての研究を進めた。さらに、江戸時代の妊産婦死亡の病因としての感染症についても考察した。 研究成果として論文「安政五年コレラ流行をめぐる<疫病経験>-駿州大宮町桝屋弥兵衛の日記からー」(『歴史学研究』2021年7月)では、大宮町の『袖日記』を用いた感染症をめぐるエゴヒストリーを描いた。単著『近世感染症の生活史 医療・情報・ジェンダー』(吉川弘文館、2022年)では、江戸都市社会で猛威を振るった主要な感染症を取り上げて、日記史料の他、医学書・絵画資料・文学資料・行政資料を複合的に用いて、感染症をめぐる生活史を描いた。共編著『〈ひと〉から問うジェンダーの世界史』( 第1巻 「ひと」とはだれか?-身体・セクシュアリティ・暴力、大阪大学出版会、2024年)においては、性感染症をジェンダー視点から分析した。資料解説『虎狼痢治準』(『緒方洪庵全集 第3巻(中)』大阪大学出版会、2024年)は安政5年の最先端のコレラ治療を緒方洪庵の医学書を分析することで明らかにした。 社会一般に研究成果を発信することも、講演会やメディアを通じて積極的に行った。主要なものだけでも、徳川みらい学会講演会、日本史史学会学術大会の市民対象講演会、徳島県立文書館歴史講座、医学中央雑誌創刊120周年記念講演会、医療とジェンダーの歴史研究会第1回シンポジウムの主催をあげることができる。
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Research Products
(10 results)