2021 Fiscal Year Research-status Report
出雲赤穴氏関係史料から探る中世後期武家領主の存在形態と行動様式
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21K00834
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
川岡 勉 愛媛大学, 教育学部, 教授 (90186057)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 武家領主 / 赤穴氏 / 佐波氏 |
Outline of Annual Research Achievements |
3年計画の初年度として、当初は東京大学史料編纂所所蔵の「中川四郎氏所蔵文書」の原本調査をはじめ、出雲赤穴氏及び石見佐波氏の関連史料を博捜・収集に努める予定にしていたが、コロナ禍のため東京出張は見送らざるをえなかった。赤穴氏の知行地であった旧赤穴荘及び佐波郷(現島根県飯南町・美郷町)の現地調査については、9月30日~10月4日の日程で決行し、飯南町教育委員会・美郷町教育委員会を訪問して、赤穴氏が所有した知行地の空間構造について多くの知見を得ることができた。 これまで収集した関連史料の分析を進め、その成果を「戦国期出雲における権力秩序の変動と『赤穴郡連置文』」(『資料学の方法を探る(21)』2022年3月)にまとめた。この論文は、権力秩序が大きく変動する戦国期出雲の時代状況と関連づけながら、永正2年の「赤穴郡連置文」の構成や内容について検討を加えたもので、この置文が惣領佐波氏に対する赤穴氏の忠節の歩みを強調するために作成されたことを解明した。また、赤穴氏の関係文書を手がかりにして、単著『室町時代の出雲と京極氏』(松江市歴史まちづくり部史料調査課、2022年3月)を刊行した。 このほか、編著『中世後期の守護と文書システム』(思文閣出版、2022年1月)には、「総論 中世後期守護の歴史的位置」・「守護の権力編成と国人・被官人―大内氏分国を中心に―」の2本の論考を発表した。中世後期武家領主の存在形態や行動様式を探りながら、室町・戦国期の都鄙関係や権力秩序の変動について総括的に論じたものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍のため東京の史料調査は見送らざるをえなかったものの、赤穴氏や佐波氏の知行地の現地調査は実施することができた。また、これまで収集してきた関連史料の分析も着実に進行し、その成果を論文や書籍の形で発表することができた。中世後期武家領主の存在形態や行動様式に関して、具体的な実像を浮かび上がらせつつあると言えよう。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルスの感染状況をにらみながら、東京都や山口県・島根県に出張して、赤穴氏関連の史料調査・収集の遅れを取り戻したい。室町幕府および守護京極氏の関係史料についても調査を進めていくことにしたい。 現地調査にも引き続き取り組み、文献史料とフィールドワークを結びつけて総合的な考察を加えることによって、中世武家領主による所領支配の実態の復元、空間構造の特質の解明に迫りたい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により予定していた出張を取りやめざるをえなかったため未使用額が生じた。次年度使用分にまわして、主に出張旅費に使用したいと考えている。
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Research Products
(4 results)