2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K00837
|
Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
麻生 伸一 琉球大学, 人文社会学部, 教授 (30714729)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 琉球史 / 近世 / 外交 / 儀礼 / 首里 / 首里城 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、首里および首里城における首里城・首里で行われた儀礼を琉球の国王や政治権力の生成や展開との関係で検討することで、琉球王権の範囲や機能を明らかにするとともに東アジア全体のなかに位置づけ直すことを目指すものである。とくに琉球王権を取り巻く権力構造を、琉球王権を主軸として捉え直すことを目的としている。 3年目にあたる2023年度には、史料集の編集とともに、おもに琉球王権の内実や首里王府の外交儀礼をテーマとして論文などの執筆を行った。具体的には、前年に引き続き首里城建造に関する絵図の分析と、起請文と冊封(冠船)をめぐる外交儀礼を検討した。また、当初の研究計画にはなかったが、機会を得たため近代の首里城についても検討した。そこでは前近代の王権を発揚するための首里城から、近代以降の教育・文化施設としての首里城へと、その役割が変化していったことを指摘した。 ほかに、史料の調査を実施した。琉球大学附属図書館では琉球使節の江戸参府関係の史料を収集した。沖縄県立博物・美術館では首里関係史料(大嶺薫コレクション)や冊封関係史料、石垣市立八重山博物館では首里王府行政関係史料(喜舎場永珣資料)や絵画史料を調査し、高精細画像データを収集した。また、王国末期の倹約令を翻刻し、資料紹介として公表した。今回取り扱った倹約令は、首里ではなく首里近隣の地域を対象としたものだが、今後関連史料と比較検討するつもりである。 関連する研究発表として「近世琉球の諸士社会における贈答と布-19世紀を中心に-」(沖縄染色研究会、2023年11月24日、沖縄県立芸術大学芸術文化研究所)を行った。首里で展開した諸士社会の贈与を染織品や職人との関わりから考えたものである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
史料の公表や、論文の執筆、研究発表など幅広い研究を行うことができた。とくに当初の予定にはなかった近代を視野に入れた研究が展開できたのは本研究にとって収穫であった。計画段階では近世以前(古琉球・中世相当期)から近世への連続性を重視するとしていたが、近代を視野に入れた研究の可能性を示すことができたものと思われる。また、沖縄県内の博物館などで実施した史料収集が充実した点も本年度の成果であった。また、絵図分析も進めることができたのも計画に沿ったものである。儀礼嘉慶の絵図など検討する関連絵図史料を増やしつつ、継続して分析をすすめる予定である。史料調査も予定よりも多くの機関を調査することができた。関連する史料について、文書史料・絵図史料も含めて幅広く実見できたと思われる。
|
Strategy for Future Research Activity |
首里や首里城の儀礼を考える上で、近世以前(古琉球・中世相当期)から近世への連続性を考える必要がある。論点を見いだしつつ、これまでの研究報告を踏まえて文章化していく。本年度の成果を踏まえて、近世以前・近世・近代という長期スパンを通観できるような論点を見つけることを次年度の課題としたい。とくに2年目に行った聞得大君をめぐる王権と儀礼については、本研究の目的の一つである長期スパンでの検討が可能となる。聞得大君の政治的な役割とその変遷を見通しつつ、首里城内の各施設や殿舎を素材に、王権に関わる儀礼を検討したい。 また、①関連する史料の所在情報の収集、②史料調査、③現地調査をより充実させたい。本年度の研究で、収集すべき史料も確認できたので、次年度以降には他の所蔵機関にも目配りしつつ継続して史料調査を進めていきたい。
|
Causes of Carryover |
資料調査について、当初予定では沖縄島以外の場所での調査を想定していたが、沖縄県内に所在する機関(琉球大学附属図書館、沖縄県立博物館・美術館、石垣市立八重山博物館)での調査を実施したため、想定以上に旅費を使用できなかった。次年度には、史料調査および資料購入費に充てたい。
|