2021 Fiscal Year Research-status Report
茶貿易を通じて見る幕末開港期の内外商人ネットワーク
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21K00838
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Research Institution | Reitaku University |
Principal Investigator |
櫻井 良樹 麗澤大学, 国際学部, 教授 (90211268)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | G・R・ホール / ウォルシュ商会 / 茶貿易 / 日米交流 / 商人ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は研究の1年目にあたるためと新型コロナウイルス流行が継続したため文献収集を中心に活動し、流行が下火になった時期に限り資料調査を行った。収集した文献は、おもに幕末の交通史関係のもので、『海事史研究』を創刊から現在まで閲覧し、関係論文を多数得た。他の雑誌を含めて数点あげれば「ラッセル会社とE・カニンガム」(久保田恭平)、「ジャンディンーマセソン商会と日清貿易」・「19世紀中葉のデント商会」(松浦章)、「1870年代の中国におけるイギリス系海運業」(石井摩耶子)など。また海外での研究文献としてAnglo-American steamship rivalry in China, 1862-1874を購入し検討を加えた。幕末に日本・中国で活動した商人に関する記録として、Edward CunninghamのOur Commercial and Political Relations with Chinaおよび Forbs, R.B.,Personal Reminiscecesを入手した。本年の最大の成果は、中山元成の「海国図誌」への言及が、蘭学史のなかでなされていることを知ったことである。横浜開港資料館で主催している「横浜関係海外資料調査研究会」で、一回は自分が海外における関係史料所蔵状況を、もう一回は保谷徹先生を招き「東大史料編纂所を中心とする内外史料のデジタル公開の現状と今後の計画について――海外史料を中心に」という報告をしていただいた。長崎県立歴史文化博物館を訪問し、幕末開港期の長崎奉行所関係資料を閲覧した。見たものの中では、「亜官吏往復留」「各国官吏往復留」「各国官吏往復留」「来翰 万延元年~文久3年 」には、長崎領事のJohn Greer Walsh関係のものが、「神奈川箱館御用状問合書留」にG・R・ホールの名前が出てくる資料があり、カメラにより撮影収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
科学研究費の申請段階では、新型コロナウイルス流行が収まることを前提に、国内調査中心の研究計画を立案していたが、年内において流行が続いたため、研究計画を修正し予算を翌年度予定していた設備備品費(図書およびPC)に振り替えた。ただし年が明けた頃から状況が落ち着いてきたため、上記のように長崎県立歴史文化博物館での資料調査を行うこととした。なお費用は、科研費はすでに使い終えていたので、別の費用を利用して行った。この調査では、有益な史料を得ることができた。 成果としては、開港資料館「横浜関係海外資料調査研究会」で「租界と外国駐屯軍--資料所在情報--」というタイトルで報告し、数年前のアメリカ訪問調査で収集した史料目録を作成し「G・R・ホール(George Rogers Hall)関係史料について」をまとめ『麗澤大学紀要』に発表することができた。これは本申請の実施計画の②の作業の成果の一部にあたる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、予算的には前年度に予定し新型コロナウイルスの流行により十分に行うことができなかった資料調査を中心に据える。行き先は、居留地の存在した横浜・函館・神戸・長崎などの図書館・資料館を対象とする。なお海外調査を次年度以後に予定しているが、状況により可能になれば、予定を早めて行うことも考えている。 デスクワークとしての研究の中心は、東京大学法学部法政史料センター原資料部に所蔵されている中山元成文書中の重要書類(たとえば日記やペリー来航時に応接にあたった河田迪斎の従者としての記録)の翻刻・史料分析により開港当時の横浜における外国人商人・中国人コンプラドール・日本人商人の活動状況を明らかにすることである。 なお海外調査の下準備として、イギリスのケンブリッジ大学図書館Jardine Matheson Archiveに所蔵されている商人で取り交わされた書簡から、居留地における人間関係や商人同士のつながりを知ることができると思われるので、まず目録の分析を試みる。
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Causes of Carryover |
わずか556円の残額であり、2022年度の予算と合算して使用しても何も影響はない。
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Research Products
(1 results)