2021 Fiscal Year Research-status Report
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21K00844
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Research Institution | Mitsui Bunko |
Principal Investigator |
下向井 紀彦 公益財団法人三井文庫, 社会経済史研究室, 研究員 (70625657)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 日本近世史 / 山陰 / 山陽 / 陰陽連絡 / 陸上交通 / 水上交通 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、18世紀後半以降の山陰地方と山陽地方との間において、如何なる商品流通・経済活動があったのか、また中央市場との関わりの中でそれらが如何に変容したのかを明らかにするものである。 主に木綿などの産物の輸送に注目し、①山陰・山陽の在地商人の史料や町村行政に関わる役人の史料を調査・収集・整理して陰陽間での商品流通・経済活動を明らかにし、②それらを三井文庫や現地に残る都市問屋に関する史料と組み合わせて陰陽と中央市場との取引関係の具体像を明らかにし、③陰陽・中央間の経済活動・流通活動の全体像を明らかにする。ここでは、④北前船など海運勢力の台頭による海上輸送の伸張や市場構造の変化のなかで、陸上輸送による陰陽連絡が如何に変化したのか、⑤近代における山陰・山陽の産業・経済活動の変化が近世の経済活動や陰陽連絡と如何に関連しているのか、などにも注意を払いつつ、近世後期の流通や地方経済の実態を明らかにしていくものである。 令和3年度は島根県内の史料調査・収集を行う予定にしていたが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響にともない史料調査出張を実施することができなかった。そのため、文献やインターネットによって史料情報の収集を行って次年度以降の史料調査の準備に重点を置いた。また、研究代表者の所属している三井文庫の所蔵史料のなかから本研究に関連する史料の調査を行った。特に後者において、三井文庫所蔵の地図コレクションの中から、山陽・山陰の陸上・海上のルート・里程を示す地図や、赤間関・尾道など中国地方の主要港の絵図を見いだすことができた。これらは次年度以降の調査・研究を行うための参考資料となるため、デジタル画像化を実施した。 これらの成果は、本研究を進めていくための重要な基礎作業であり、次年度以降の史料調査と研究の方向を定めるものとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
先述したように、令和3年度は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による移動制限にともない、計画段階で想定していた島根の史料調査・収集や収集史料の分析を行うことができなかった。 これらの史料調査・収集については来年度以降に実施を延期することとし、本年度は文献やインターネットにより史料情報の収集を行い、計画段階で想定していなかった新たな史料調査の候補を検討することができた。これらは来年度以降に史料調査を実施する予定である。 また、研究代表者の勤務する三井文庫で所蔵している史料を今一度チェックすることに重点を置いた。これまでは三井関係の史料を中心に調査していたが、参考図書として所蔵している史資料や地図コレクションにも調査範囲を拡大した。その結果、これまで注目されていなかった山陰・山陽方面の絵図や地図を見いだすことができた。特に近世中期の赤間関、尾道の絵図は現時点で他に見られないものである。陰陽連絡路と瀬戸内海輸送路の結節点である港町を、空間的に把握できる重要な参考資料になるため、これらの絵図・地図のデジタル画像化を実施した。なおデジタル画像作成にあたり、出張旅費として想定していた費用の一部を、規定の範囲内において転用した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度に実施予定であった史料調査・収集および収集史料の分析は、新型コロナウイルス感染症の感染状況をにらみつつ、来年度以降に改めて実施する予定である。 史料収集としては、松江の飛脚問屋の原家文書(松江歴史館所蔵)、岡山県真庭市の本陣史料である景山家文書(真庭市教育委員会所蔵)、津山の大年寄の玉置家文書(津山郷土博物館所蔵)など、島根・岡山の輸送関係史料や交通の要衝に関する史料を想定しているが、令和4年度は、これまで研究フィールドとしてきた島根を中心に史料調査を実施する予定である。ここでは史料所蔵状況の全体像を把握しながら、特に交通・商品流通関係史料に力点を置いて幅広く史料を収集する。 三井文庫所蔵史料については、三井関連史料とともに、それ以外の史資料についても調査を行う。これまで注目されていなかった交通・流通関連の史資料がありうるため、作業を進める。また、関連する地方史関係文献の収集・複写も継続して行う。 これらの成果を踏まえて史料を読み込んで分析し、中央市場(ここでは特に京・大坂)における雲伯地域の産品の位置付けや、各地で展開していた経済活動との関わりについて具体的に明らかにし、日本海側の新興海運勢力や近代における鉄道や新たな交通機関などとの関わりについても展望し、研究成果としてまとめたい。
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Causes of Carryover |
先述の通り、新型コロナウイルス感染症の感染拡大にともなう出張制限により、史料調査出張を計画通り実施することができなかった。規定の範囲内で史料のデジタル画像化に旅費を一部転用したが、旅費を計画通りに使用することができなかった。 次年度においては、新型コロナウイルス感染症の状況を見つつ、調査計画を見直して、史料調査出張を実施する予定である。
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