2021 Fiscal Year Research-status Report
日中戦争・太平洋戦争期華南における中国占領地支配の進展と国際環境の変容
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21K00863
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
竹ノ内 文美 (吉井文美) 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (30749370)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 珠江 / 航行権 / 日英関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
日中戦争期の日本の中国支配は、外国権益が多数存在する地域に対して、占領地支配を行う法的な背景が曖昧なまま進展していた。そして、その性質は太平洋戦争開戦時に中国および、外国権益の所有国(イギリスやアメリカなど)と日本が宣戦布告を行うことで変化した。本研究は、日中戦争期・太平洋戦争期の華南(中国南部)において、日本の中国支配の拡大とともに同地域の政治・経済・社会的ネットワークが変容したことで、同ネットワークと深い関係性のなかで存在していた外国権益がいかなる対応を迫られたのか、そしてそれによって日本をとりまく国際関係がいかに変化したのかについて、多言語史料に基づいて明らかにするものである。これにより、正規のかたちの軍政を施行できなかった日中戦争の占領地支配の特質と、太平洋戦争開戦がもたらしたインパクトについて華南の事例を明らかにする。 今年度は日中戦争期の珠江航行をめぐる日本とイギリスの間の交渉について考察した。珠江は、華南地域の経済的な中心地の一つである広州港と英領香港を結ぶ河川であり、経済的・軍事的に極めて重要な意味を持つ。イギリスやアメリカなどの列強は、同河を自由に航行する権利を中国から獲得していた。しかし、1938年の日本軍による広東攻略以降、日本は同河の一部を軍事封鎖したため、航行再開をめぐる交渉が主に日本とイギリスの間で展開された。今年度の研究では、珠江が日本軍によって封鎖されてから、部分的に開放されるまでの間に展開された外交交渉について、日本外務省や海軍、イギリス外務省、アメリカ国務省の史料をもとに実証的に明らかにし、研究報告を行った。さらに、研究報告を通して得られたコメントをもとに新たな資料の調査・分析も行い、研究成果を学術論文としてまとめるための準備を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルス感染症の世界的な流行が依然続いているため、海外での史料調査は実施できなかったが、国立国会図書館や防衛省防衛研究所での史料調査を継続的に行ったことで、本研究に関連する新たな史料を見つけ、研究に活かすことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究成果を踏まえたうえで、今後は珠江封鎖が継続されたことにより、現地の経済ネットワークがどのように改変されたのか、そしてそれはどのような国際的影響をもたらしたのかについて解明していく。
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Causes of Carryover |
産前産後休暇および育児休業の取得により研究が中断されたため次年度使用額が生じた。次年度使用額は、今年度実施できなかった出張を行うなどの形で使用する。
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Research Products
(1 results)