2021 Fiscal Year Research-status Report
室町幕府支配下での在国領主の現地支配―在京領主支配との比較から―
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21K00867
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
大薮 海 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 准教授 (80748054)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 北畠氏 / 支配 / 権威 / 石垣 / 石積 / 威信財 / 伊勢国司 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、在国領主である北畠氏の支配方法について検討する計画を立てていた。まず、『三重県史』に所収されている史料を読み進めることにより、北畠氏が人々を支配した実際の方法を考察する作業を進めていった。 だが、その作業を進めていくうちに、そうした文字史料から判明するシステム的なものではない心理的な面、すなわち「なぜ伊勢国の人々は北畠氏に従ったのか」という疑問を抱くに至った。これについては、北畠氏が「伊勢国司」であることの権威が人々に与えた影響が先行研究によって指摘されていると思われる。しかし北畠氏が伊勢国司に補任されたのは南北朝時代の一時期のみである。「伊勢国司」の権威はいつまで意味を持ち得たのか、つまりその有効性を通時代的なものと考えてよいのだろうか。室町時代以降、「伊勢国司」が北畠氏の通称化していたことは以前強調したことがある(拙著『室町幕府と地域権力』吉川弘文館、2013年)。通称化するほど人々に馴染みがあるものであったとはいえるが、それが支配権威と直結するかどうかは慎重に検討しなければならないであろう。 そこで本研究では、より目に見える形の権威として、15世紀に北畠氏の居館に築かれた石垣(石積)に注目した。この石垣(石積)について文字史料は管見の限り確認できないので、考古史料を活用したり古代の威信財研究を参考にしたりしながら、居館の石垣構築が伊勢国の人々に与えた影響について考察を行った。これは口頭報告を行った後に論文化した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍により史料の現地調査が不可能な状態が続いており、その点では研究計画に遅れが認められる。しかし北畠氏の支配システムについて、文字史料以外からアプローチを試みた結果、一つの仮説を立てることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は伊勢神宮を検討対象とする予定であるが、上述のように北畠氏に関する史料の現地調査を行えていない。感染状況を注視して調査の機会を伺うとともに、北畠氏に関する史料の再検討も併せて進めていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため現地調査が全く行えず、旅費の支出がなかったため次年度使用額が生じた。次年度はこの次年度使用額を使用して現地調査を行いたいと考えている。
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Research Products
(3 results)