2021 Fiscal Year Research-status Report
Comprehensive study of Japan medieval history , archeology, and castle history related to the Sengoku daimyo territory
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21K00884
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Research Institution | Kitakyushu Museum of Natural History and Human History |
Principal Investigator |
中西 義昌 北九州市立自然史・歴史博物館, 歴史課, 学芸員 (50633020)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 貴司 福岡大学, 人文学部, 准教授 (80882480)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 大友氏 / 分布データベース / 分布論 / 大名領国 / 文献史学 / 考古学 / 城郭史 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は、度重なるコロナ禍により県外出張などができない時期が長期化したため調査が滞り、雑誌論文・学会報告等の研究実績につなげることができていない。その代わり、次年度に研究実績を提出するための準備に充てた。具体的には以下の通りである。 考古・城館班は研究代表者が世話人となり、城館班では北部九州を中心に①筑前国西部の博多湾沿岸から太宰府に点在する大友氏の拠点城郭(立花山城、柑子岳城、安楽平城、鷲ヶ岳城、岩屋城など)②大友氏の本拠地(豊後国・豊前国北部)の大友氏の拠点城郭(高崎山城、妙見岳城など)から城館分布データベース作成に着手し、築城技術の分布状況から戦国後期の大友氏領国の特徴を分析し論文化を進めている。そして、考古班では筑前国・豊前国・豊後国でそれぞれ担当者を起き、発掘調査報告書のデータを基に、主な城郭遺跡に隣接する中世遺跡の考古資料を抽出し分布データベースの作成と分析を進めている。筑前国、豊前国では先行して分布データベースの作成が行われ、次年度の研究実績につなげる予定である。 一方、文献班は研究分担者が世話人となり、早くから大友氏の拠点となっていた豊後国に留まらず、室町・戦国期に支配領域となっていった筑後国・筑前国・豊前国にも視野を広げる形で大友氏関連史料を収集し、①城館をキーワードとした関係史料のデータベース化と、②豊後国以外の領国における大友氏拠点・所領の分布データベースの作成を進めている。また、併行して筑後国・筑前国・豊前国支配の様相の分析も進めている。これらの作業を通じて、次年度以降、豊後国外における大友氏の支配体制・軍事構造の具体像の抽出を進め、大友氏領国を俯瞰的に捉えた研究成果の提出を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
4月の採択を受けて、研究分担者、及び北部九州中近世城郭研究会の研究協力者と共に連携し、福岡県・大分県の文献・考古・城郭史の研究者を研究協力者として招聘し研究チーム(文献班・考古班・城館班)の編成を行った。最初の全体会議は、5月下旬に北九州市立自然史・歴史博物館にて開催を予定していたが、コロナ禍のため2ヶ月遅れ、7月31日にオンライン会議で開催した。ここで研究目的・研究手法の説明を行い、当初の2部会から県を横断する形で文献班・考古班・城館班の3班に編成し直し、班毎に今後の分布データベースの作成、研究の進め方について協議を行い、作業に着手した。 その後も、国の緊急事態宣言・福岡県のまん延防止等重点措置により県外出張の自粛等の措置が続いたことで、研究着手の段階で、研究目的を柱となる「大分県内・県外(主に福岡県)から文献史学・考古学・城館研究各分野のコアメンバーを集め研究チームを編成」することはできたものの、「今日の行政単位の枠組みを越える形で連携を図り研究課題に取り組む機会」を設定することができなかった。そのため、全体会議、巡見・検討会を通して研究チームの顔合わせを行い、大友氏領国を俯瞰的に検討することに対する理解を深め議論を交わすといった、互いの意思疎通を深める機会を最初に用意できず、序盤で研究計画が大きくつまずいた。結局、令和3年度内に巡見・検討会を実施することはできなかったが、各班でオンライン会議を行い、史料、資料データの収集と分布データベースの作成を進めた。文献班は11月13日、考古・城館班は1月22日、2月10日にミーティングを行い、作業分担と進捗状況の確認を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は前年度にコロナ禍で大幅に遅れた分を取り戻すべく、何よりも、研究目的を柱となる「大分県内・県外(主に福岡県)から文献史学・考古学・城館研究各分野のコアメンバーを集め研究チームを編成し、今日の行政単位の枠組みを越える形で連携を図り研究課題に取り組む機会」を早急に実施する。これにより、福岡県・大分県の研究分担者・研究協力者がオンラインではなく、県境を超えて一堂に会し、研究チーム全体の顔合わせを行うと共に、拠点城郭や大友氏関連遺跡を廻り大友氏領国を俯瞰的に検討することに対する理解を深め、大友氏支配の実態について議論・意見交換する機会を提供する。その上で、各班において令和3年度から着手した分布データベース作成の円滑化と新たな視点の獲得を促す。巡見・検討会は、4月に第1回「大友氏の博多湾支配を考える」を福岡市で開催し、博多湾における大友氏の拠点、立花山城・香椎郷と柑子嶽城・志摩方の巡見を行い、大分県側の研究者を福岡県側に招聘し議論・意見交換する機会を提供する。11月には第2回「大友氏領国の中枢を考える(府内・高崎城)」を大分市で開催し、大友氏の本拠である豊後府内と高崎山城の巡見を行い、福岡県側の研究者を大分県側に招聘し議論・意見交換する機会を提供する。これにより、各班での調査出張などを積極的に促すようにしたい。その一方で、文献史料、遺跡・考古資料、城館の分布データベースの作成目処を立てその後の分析のために夏と冬には北九州市立自然史・歴史博物館と大分県立先哲史料館にて全体会議を行う予定である。会議では、研究経過報告と検討会を開き令和4年度後半から令和5年度の研究実績につなげる。併せて、最終年度の令和5年度に研究成果の発表する場として企画展を行うための実施に向けた検討・調整を行う。
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Causes of Carryover |
令和3年度は当初の予想を遥かに上回るコロナ禍の影響により研究計画の遂行に深刻な影響を受けた。国の緊急事態宣言・福岡県のまん延防止等重点措置が累計約5ヶ月半と長期化したため、所属館の規則などに基づく県外出張の自粛等の措置があり、全体会議や個別調査に出張する機会が大きく制限された。このため旅費、人件費・謝金がほとんど執行できなかった。 令和4年3月以降、国の緊急事態宣言・県のまん延防止等重点措置も終了し、感染予防対策を取りながら県外出張など逐次活動が再開されつつある。次年度使用が生じた分は、令和4年度に研究体制の深化を図るために研究チームの移動のための旅費や調査費に重点的に充てる計画を立てている。具体的には、研究計画に沿って文献班・考古班・城館班で行う調査出張などを進めると同時に、令和3年度は実施できなかった巡見・検討会を4月と11月に福岡市と大分市で開催することで、福岡県・大分県の研究分担者・研究協力者が県境を超えて一堂に会し、拠点城郭や大友氏関連遺跡を廻り大友氏支配の実態について議論を深める。また、夏と冬には北九州市立自然史・歴史博物館と大分県立先哲史料館にて全体会議を行う予定である。その上で、令和5年度の研究成果の提出、論文などでの発表、展示活動等での還元のための準備経費にも充てる予定である。
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