2022 Fiscal Year Research-status Report
Comprehensive study of Japan medieval history , archeology, and castle history related to the Sengoku daimyo territory
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21K00884
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Research Institution | Kitakyushu Museum of Natural History and Human History |
Principal Investigator |
中西 義昌 北九州市立自然史・歴史博物館, 歴史課, 学芸員 (50633020)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 貴司 福岡大学, 人文学部, 准教授 (80882480)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 大友氏 / 分布データベース / 土木インフラ / 戦国大名 / 戦国期守護 / 文献史学 / 考古学 / 城郭史 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度は、2回の巡見・検討会を軸に、戦国期大友氏の勢力圏を城館・考古・文献のそれぞれの研究視点から俯瞰的に捉える作業を進めた。 第1回の巡検・検討会「戦国期大友氏の博多支配を考える」(4月23日・24日実施)では戦国期大友氏の博多湾支配の拠点に関連する遺跡・山城の巡検を行った。続いて第2回の巡検・検討会(11月19日・20日実施)では、本国豊後国における大友氏の本拠地、豊後府内と別府湾に関する遺跡・山城を巡検した。巡検・検討会の結果、参加者の間で豊後国、筑後国、筑前国、豊前国、肥後国を横断する形で俯瞰的に関連史・資料の整理・分析する視点を共有することができた。その中で、当初計画で示した福岡県・熊本県北部と大分県の部会編成を城館・考古・文献の班単位に再編し、各班で調査・検討を行う形に切り替え、学会等の発表や投稿論文を行った。 具体的には、城館・考古班では、戦国後期(16世紀)から検討を進め、城館分布、及び考古資料データベース(発掘調査報告書を基に、主な城郭遺跡に隣接する中世遺跡の考古資料を抽出)の作成を行うと共に、城館・都市・景観整備の過程を地域における「土木インフラ」として一括する視点を導入し、別府湾周辺、博多湾岸地域、筑後川下流域などを対象に、大友氏に関連する城館と中世都市(立花山城・御飯ノ山城と香椎、博多、柑子嶽城と志摩方、高崎城と豊後府内、筑後川下流域の西島城・海津城)の調査、及び周辺景観の復元と分析を行った。その成果は学会等の研究発表と論文投稿につなげることができた。一方、文献班では、中世後期(15世紀)から検討を進め、大友氏勢力圏の内、豊後国・筑後国を中心に関係史料のデータベースの作成を行い、研究発表につなげることができた。 最終年度は各班の成果をとりまとめ、大会シンポジウム報告、研究報告書の作成により大友氏勢力圏を俯瞰的に捉えた研究成果の提出を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナ禍の行動制限が緩和されたことを受けて、令和4年度は、感染予防対策を講じながら、1年目に予定していた巡検・検討会を春に実施し、2年目の巡検・検討会も秋に実施するなど当初の研究計画を軌道に乗せることができた。しかし、下半期に所属館にてリニューアル事業が行われたこともあり、調査・研究事業に積み残しが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
現状、半年分程度の遅れを回復できず推移しているところである。最終年度に積み残し分を取り戻すには日程的に厳しい状況であるが、令和4年度について最終年度に向けたシンポジウムの開催と研究報告のとりまとめに向けたスケジュールを決め、各班単位で前倒しの形で調査研究を進めているところである。 城館・考古班では、大友氏の城館・関連遺跡についてデータベースの作成と平行して、16世紀を中心に博多湾(立花山城・香椎、柑子嶽城・今津、博多)、豊後府内・別府湾(高崎城・大友氏遺跡、鹿越城、天面山城)、及び中津平野や筑後平野の城館などの現地踏査を行い、研究課題の解明に取り組んだ。 一方、文献班では15世紀から大友氏関連の文献史料の整理・データ化を進めると共に、戦国期守護論に基づく分国支配の観点から文献史料の精査を行い、大友氏の支配体制の解明を進めている。各班の調査研究の成果は、学会等の研究発表や論文の投稿(次年度掲載予定)につながっている。 令和5年度(最終年度)は、行動制限も大きく緩和され、1年目・2年目よりも積極的な活動が見込まれる。既に、令和5年11月18日・19日に九州城郭研究大会(主催:北部九州中近世城郭研究会)にて、シンポジウム「城館・考古・文献から大友氏領国を俯瞰する」を企画し研究成果の報告を行うこと、そして、年度末に全体の最終的な研究報告書を作成することを決定している。 シンポジウムについては、発表者を選定し、6月に第3回の巡検(久留米市高良山)を実施し、その後、2回程度の検討会(北九州、大分を予定)を行う予定である。検討会では調査研究成果の共有を行い、シンポジウムと報告発表の準備を進める。また、シンポジウム実施後にそれらの成果をまとめ、一部は最終的な研究報告書に盛り込む予定である。
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Causes of Carryover |
令和4年度は行動制限が緩和された一方で、下半期に所属館のリニューアル事業などに時間を取られたため、日程的に、2年目は1年目の積み残しと2年目の計画をすべて実施するには至らなかった。その結果、実質1年目の計画は遂行できたものの、2年目に実施予定の計画を積み残す形となり、その分、予算を十分に執行できなかった。 次年度使用が生じた分の執行は、令和5年度と併せて、城館・考古・文献各班の調査旅費、秋の九州城郭研究大会(主催:北部九州中近世城郭研究会)のシンポジウム「城館・考古・文献から大友氏領国を俯瞰する」開催に向けた検討会の実施に重点的に充て、遅れを取り戻す予定である。 具体的には、研究計画に沿って6月に第3回巡検を行い、その後、2回程度の検討会(北九州、大分を予定)を実施しシンポジウムに向けて準備を進める。それらの機会の中で、文献班・考古班・城館班に積み残しの調査を進めるよう促す。下半期は、シンポジウムの実施と記録に重点的に経費を充てる。そして、シンポジウムの前後に補足調査を積み重ね、シンポジウムの成果と本科研の研究計画に沿った調査研究の成果を取りまとめ、論文・研究報告の発表、及び年度末の研究報告書の刊行のために経費を充てる。
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