2021 Fiscal Year Research-status Report
朝貢プロトコルの歴史性―周縁の戦略的選択からみた地域交流システムの再検討―
Project/Area Number |
21K00893
|
Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
岡本 弘道 県立広島大学, 地域創生学部, 准教授 (70469237)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 朝貢 / 外交 / プロトコル / 明朝中国 / 中華 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「朝貢」という「プロトコル」(手順・規則)を中国からみた“中華”に対する“外夷”の従属としての非対称的関係としてではなく、非中国世界からみた戦略的な相互関係として位置付け直し、当時の人々の意識、取り得た選択肢の幅、「朝貢」プロトコル自体の変容などを再検討するものである。 明朝期およびその前後の時代の人々の「朝貢」意識・認識についての調査・分析、周縁の各朝貢国・朝貢勢力にとっての「朝貢」以外の選択肢についての調査・分析、そして「朝貢」プロトコル自体の時代的変容に対する調査・分析、およびその理論化を通じて、「朝貢」という関係構築プロトコルの普遍性・汎用性及びその限界を明らかにすることを目指している。 本年度は、前近代東アジアを通じて「朝貢」がとりわけ重視されていた明朝期およびその前後の時代についての研究を進めた。新型コロナウイルス感染症流行の影響もあって文献調査・史料収集活動は大きな制約を受けることとなったが、その中でも可能な範囲で先行研究の再整理や史料調査を通じた事例収集を行い、「朝貢」の持つ関係性と役割の多様性について確認することができた。 また、豊臣秀吉の朝鮮侵略の停戦期に明朝から日本側の武将に下賜された文書や冠服等、必ずしも「朝貢」に関わらない日本現存の史料に着目することを通じて、現場レベルでの詳細な事務手続きのプロセスや関係性の論理について再検討しうる可能性が大きいことを確認した。 この事例は厳密には「冊封」の一事例であるが、「朝貢」の論理の再検討にも大きく寄与する事例であると考える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症流行の影響により、当初予定していた資料調査等の活動が大幅に制約を受けたため、わずかに移動が可能であった時期に開催された研究シンポジウムに参加し、限定的な調査出張を行うに留まった。またそれに伴い、多額の繰越金も発生した。 次年度については、この遅れを取り戻し、精力的に調査活動を進めていきたいと考えている。ただし、当初予定していた海外調査については実施可能か不透明であり、当面は国内調査に重点を置いて研究を進めていきたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
まずは前年度の遅延部分の挽回に努めていきたい。海外調査に関する部分は今年度も実施可能かどうか状況が不透明であるため、ひとまずそれ以外の国内調査を重点的に行う予定である。 とりわけ、明朝期およびその前後の時代の人々の「朝貢」意識・認識についての調査・分析についての研究を重点的に進めると共に、周縁の各朝貢国・朝貢勢力にとっての「朝貢」以外の選択肢についての調査・分析についても可能な限り作業を進め、恐らくは次年度以降になると思われる海外渡航を通じた調査研究を円滑に遂行できるよう入念に準備を行いたい。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症流行の影響により、当初予定していた国内での文献調査の大部分が実施困難となったため、今年度の使用を差し控え、次年度以降の使用にまわすこととした。 この分の金額については、次年度の金額と併せて精力的に国内調査を進めると共に、研究の進展に応じて、国内で蒐集可能な資料をとりそろえてゆく計画である。また、海外調査については実施可能性が今年度も不透明なため、状況によっては次年度に繰り越すことも念頭に置きつつ、実施のタイミングを探っていきたい。
|