2021 Fiscal Year Research-status Report
Research on History of Japanese-African Relations during World War II Through An Analysis of War Survivors' Experiences
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21K00897
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
溝辺 泰雄 明治大学, 国際日本学部, 専任教授 (80401446)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 第二次世界大戦 / ビルマ戦線 / インパール作戦 / 旧日本軍 / アフリカ人兵士 / 日本アフリカ関係史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、第二次大戦期のインド=ビルマ戦線において直接交戦せざるを得なくなった日本軍兵士とアフリカ人兵士およびその戦闘に関係した(もしくは巻き込まれた)人々の記録・記憶の分析・検討(具体的には、日本とアフリカ、イギリスの元従軍兵士および将校らが戦中、戦後に書き遺した日誌や回想録、関係者の聞き取り資料等の相互参照)を通して、戦場における彼らの経験の態様を解明することにある。
研究初年度にあたる令和3(2021)年度は、当初予定通り、日本側の資料の調査・収集に集中して研究活動を実施した。COVID-19の感染対策を十分に考慮に入れた上で実施した京都府(京都府立京都学・歴彩館「京都資料総合閲覧室」)と滋賀県(滋賀県立図書館「滋賀資料コーナー」)での資料調査では、ビルマ戦線に動員された、京都南部地域出身者を中心として組織された第53師団の「歩兵第128連隊(安10021部隊)」の退役軍人会(128ビルマ会)によって編纂された回想録や福井県敦賀市に設置された第116師団の「歩兵第109連隊」従軍者による回想録等を参照し、部隊の背景情報および戦地での経験について詳細な情報を収集することができた。特に、これまで国内外の先行研究に言及されていない、終戦後の現地捕虜収容所における「アフリカ兵」を記述した資料の存在も確認でき、第二次対戦機の日本アフリカ関係史を跡付けることを目指す本研究にとって重要な手かがりを得ることができた。
さらに、第二次世界大戦関連の諸文献の収集・確認作業を通して、ビルマ戦線・インパール作戦に関する周辺情報の確認・整理もおこなうことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定では、研究初年度(令和3年度)は、防衛省防衛研究所資料閲覧室、国立国会図書館における史資料調査、および、インパール作戦以降にビルマ戦線に従軍した日本軍第15、28、33軍関連の退役軍人組織での資料・聞き取り調査による、元将校・従軍兵士・従軍記者等による日誌、手記、回想録類に表出する日本兵とアフリカ兵との交戦に関する情報の収集等を実施する予定であった。 しかし、COVID-19の感染状況を受けての緊急事態宣言・まん延防止等重点措置の発令により、資料調査機会の制約や対面での聴き取り調査を行う機会が大幅に制限されることになった。 その対応策として文献資料の収集や現時点で把握できている情報に基づく概説書の執筆作業などに注力したが、当初予定の調査活動という点ではやや遅れているとの評価をせざるを得ない状況にある。 一方で、限られた条件内で実施することができた調査において、今後日本国内の史資料の重点的な調査によって、国内外の先行研究において未言及の記録を収集できる可能性を確認した。そのため、残り2年となった研究期間を有効に活用するため、今後は海外での調査の可能性を模索しつつ、国内各地に存在する史資料の調査・収集活動を通して、「埋もれた」情報の「発掘」作業にも注力していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定では、研究2年目(令和4年度)は、西アフリカでの調査を中心に研究を実施する予定であった。しかし、収束が見通せないCOVID-19の感染状況のなかで、すくなくとも令和4年度前半にアフリカで調査をおこなうことは容易でないことが見込まれている。 一方、研究初年度(令和3年度)における国内の図書館・資料館における一連の調査を経て、日本各地の図書館・資料館には、これまで国内外の先行研究に言及されていない、ビルマ戦線における旧日本兵とアフリカ人兵士との関わりを記録した旧日本軍従軍者による回想録等が所蔵されている可能性が高いことが改めて確認された。 そのため、引き続きアフリカでの調査の可能性を模索しつつ、次年度以降も国内各地の図書館・資料館においてビルマ戦線に従軍した日本軍将校・兵士・その親族等の戦争体験者らによる同戦線の記録・記憶に関する情報収集を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
初年度の研究実績欄で述べたとおり、COVID-19に係る緊急事態宣言等の発令により、当初予定の資料調査を計画通り実施することができなかった。そのため、研究2年目(令和4年度)以降も、海外での調査の可能性を模索しつつ、日本国内の図書館・資料館での資料調査を併せて実施していく予定である。
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