2021 Fiscal Year Research-status Report
Decolonization prosses of Technologies: the case of the water resource management in Taiwan
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21K00898
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
清水 美里 立教大学, 経済学部, 助教 (70785550)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 水資源 / 台湾 / 技術移転 / 脱植民地 / 水利史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は5つの小テーマがあり、その小テーマごとに研究スケジュールを組んでいる。①灌漑用水システムの変遷、②灌漑用水の工業用水への転用、③水力発電システムの変遷、④水道システムの変遷、⑤総合的利水システムの変遷である。 2021年度は①の小テーマについて国内と台湾で調査を行う予定であったが、台湾調査が行えず、国内調査も制限されていたため、台湾に限らず近年の水資源の技術移転に関する研究を広範にサーベイした。また、オンラインで学会、研究会、国際シンポジウムに参加し、本研究の仮説の有効性を検証した。 これにより、研究の視座に植民地化以前の伝統社会からの連続性という要素を加える必要性を見出した。というのも、本研究の仮説とは戦前と戦後の水資源開発の技術を連続と断絶という二項対立でとらえるのではなく、連続性とみなされていた事象のなかに「技術の脱植民地化」という現象があるのではないかというものであったが、連続性のなかには植民地期から戦後への連続だけでなく、植民地化以前の伝統社会から植民地期を経て戦後に連続している現象も考えられることが分かった。そして、その伝統社会からの連続性はモノや担い手となる人材という目に見える側面ではなく、本研究が着目している目に見えないシステムの部分により一層見出すことができる。このため、本研究の分析においても注意を払うべき視点である。 また、過去に台湾で収集した資料や現地調査の記録等を確認しなおした。これらの資料やオンライン公開されている資料を用いながら、2022年度に研究成果をまとめたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2021年度は小テーマ①灌漑用水システムの変遷を国内および台湾で調査することを予定していた。これまでの研究の中で資料の所在はおおよそ把握していた。しかし、新型コロナウィルス流行の影響により、台湾調査は全く行えず、国内調査も制限されていた。よって、国内における書籍を中心とした資料収集と、かつて収集した資料の整理に作業を切り替えた。ただし、手元にある断片的な資料で成果をまとめるのは困難であり当初の予定より大幅に遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
①かつて台湾で収集した資料を用い、戦後台湾の灌漑用水システムの変遷と帝国日本の技術との関係性に関する研究をまとめる。主に戦後台湾で刊行された技術専門雑誌を用いる。 台湾渡航が可能となった場合には、2021年度に収集を予定していた調査地に赴き、新資料を収集する。この資料を用いて新たに研究論文をまとめるのか、戦後台湾の専門雑誌による研究に補充していくのかは未定である。 ②灌漑用水の工業用水への転用の研究に着手する。しかし、2022年度も台湾渡航が困難となった場合、スケジュールを変更し小テーマ③へ切り替える。 ③水力発電システムの変遷の研究に着手する。かつて収集した英文、中文資料の分析とアメリカでの資料収集を行う。アメリカは戦後台湾で発電所建設に際し技術提供を行っていた。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス流行の影響により、台湾調査は全く行えず、国内調査も制限されていた。そのため旅費を使用する機会が減少した。代わりに書籍などの収集に使用したがそれでも次年度使用が生じた。 だが、渡航制限も緩和の兆しがあり、次年度も台湾調査が難しい場合は国内調査やアメリカ調査などに切り替え、今後は積極的に国内外調査の機会を増やしていく予定である。
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Remarks |
「Book reviewアジ研的本棚 台湾、あるいは孤立無援の島の思想-民主主義とナショナリズムのディレンマを越えて」『なじまぁ』12号、2022年3月、22頁 「書評 三尾裕子編『台湾における<日本>認識-宗主国位相の発現・転回・再検証』」『日本植民地研究』第34号(印刷中)
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