2021 Fiscal Year Research-status Report
初期イスラーム時代歴史叙述におけるカリフ観の史料間比較分析
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21K00901
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
亀谷 学 弘前大学, 人文社会科学部, 准教授 (00586159)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | カリフ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、初期イスラーム時代(西暦7世紀から9世紀)研究の基礎史料である6種の歴史叙述作品の中のカリフに関する記述を比較・分析し、個々の作品の史料的性格とそれらの間に存在する差異について考察することで、初期イスラーム時代の歴史叙述にどのようなカリフ観が反映されているかを明らかにするものである。 2021年度に行った研究として、カリフに関する歴史叙述の比較・分析については、第二代正統カリフ・ウマルの死に際して行われた、シューラーと呼ばれるカリフ選出のための話し合いに関するテクストの分析が挙げられる。これについては、現在論文化の作業を行っているところである。また、10月に行われた日本オリエント学会第63回大会初日の公開シンポジウム「イスラーム初期史をどのように描くか」においては、「ムハンマド:歴史学的研究は何をもたらしたか」という題目で報告を行った。この報告はムハンマドに焦点を当てたものであったが、初期イスラーム時代研究が、歴史叙述の評価の問題とどのように関連して進展してきたのかを示したものと位置付けられる。さらに、初期イスラーム時代全般にわたる史料論とそれがもたらす研究上の方法論的発展についてまとめた論考を準備した。この論考については2022年度前半に論集の一部として出版されることが決定している。 なお、COVID-19流行の影響により、海外での関係写本調査・収集が困難であったため、写本に関する作業の進捗は乏しいものであったが、当該の6種の歴史叙述作品の写本についての情報の整理を進めた。研究協力者との間の研究会、読書会、打ち合わせについても、一ヶ月に一度程度オンライン上で行っており、来年度以降、どのように成果を報告・出版してゆくかについても検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
COVID-19が流行している状況の中でも、現在可能な部分について作業や研究を進め、一定の成果を出すことができたという点で、おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度以降は第一に、本年度に実施できなかった海外における写本調査等を行うことが不可欠であり、それを実施するための計画を十分に立てる必要がある。また、対面の研究会・学会の開催が可能となりつつあることを踏まえて、当該科研のメンバーを中心としたパネル報告の準備も行なってゆく予定である。
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Causes of Carryover |
COVID-19流行によりとりわけ海外渡航等が困難であり、海外における写本調査に用いる旅費の支出および写本取得に関わる費用の支出、また、国内・海外における研究会・学会等への参加についての旅費の支出、それに際して必要な準備のための物品購入にかかる支出について、今年度は実施することができなかった。これらの作業については、2022年度以降に改めて実施することを計画している。
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