2022 Fiscal Year Research-status Report
戦後日中関係史の再検討:国共双方の対日工作の展開と中国人団体・中国関連団体の役割
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21K00910
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
荒川 雪 (王雪萍) 東洋大学, 社会学部, 教授 (10439234)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山影 統 慶應義塾大学, 総合政策学部(藤沢), 講師(非常勤) (60766690)
井上 正也 慶應義塾大学, 法学部(三田), 教授 (70550945)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 在日中国人団体 / 中国関連諸団体 / 中国国民党 / 日本共産党 / 中国共産党 / 中華人民共和国 / 中華民国 / 日中関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主たる問いは、①中国共産党(以下:中共)・中華人民共和国政府(以下:人民政府)はどのような政治過程を経て在日中国人団体と中国関連団体の支持を獲得したのか、これらの団体の活動は日本国内の対中共・人民政府イメージの好転に対しどのような役割を果たしたのか、そうしたイメージの好転は日中国交正常化にどのような影響を与えたのか、②中華民国政府(以下:国府)はどのような過程を経て在日中国人団体と中国関連団体の支持を喪失していったのか、これらの団体の支持の喪失は日本国内の国府イメージの悪化にどのような影響を与えたのか、かかる日本の国府イメージの悪化は日華断交にどのような影響を与えたのか、という点にある。 2022年度では、初年度で収集した史資料のデータベース化を行い、2021年度コロナ禍のため、収集できなかった史資料の収集も行った。特に収集した親中共及び親国府の諸団体の機関紙に関する分析を主に行い、これらの団体の設立過程から、中国の内戦を経て、親中共と親国府の団体へと変身する要因を分析した。1952年以降、国府が日本との外交関係を有し、大使館を設置しているにもかかわらず日本国民の支持を失ったのに対して、外交関係がない人民政府が、正式な政府人員を日本に駐在させられなかったにもかかわらず、日本国民、世論の高い支持を得ることができた構造を解明した。これは、国際関係史・外交史、メディア史、政治学的にみても、興味深い事象である。かかる構造は、今日では国交のある中国へのイメージの著しい悪化、断交して大使館を置けずに台北駐日経済文化代表処しか設置できない台湾への良好な国民感情の形成という、正反対の様相が見られていることに鑑みれば、日中台関係が今後どのような展望を見せるのかを検討する際にも学術的意義があり、社会還元を果たしうるものと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は日中台の研究者による共同研究であり、日中台の研究者は各自に分担された史資料の調査を行い、更に関係者へのオーラルヒストリーを実施することで、冷戦初期の中共と国府の海外華僑団体の争奪の状況を再現することが特徴である。本年度は日本と台湾での調査はおおむね順調に進められたが、中国の新型コロナウイルスの感染拡大によって、中国側の研究協力者の移動がかなり制限され、史資料館の休館も多かったため、中国で予定された史資料調査とオーラルヒストリーの実施が予定よりかなり遅れた。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、中国での行動制限が緩和されたため、2022年度に予定されていた中国での調査は年度前半に行い、その成果はグループ内で共有することを最優先にする。そして、過去2年間日中台で収集した史資料のデータベース化を進め、また実施したオーラルヒストリーのテープ起こしの作業を完成させ、研究成果をまとめる予定である。日中台の研究メンバーによる研究成果を各自の論文として公刊するとともに、年度末にワークショップを開催し、本研究の分析結果及び事例研究の内容分析についての報告と討議を行う。ワークショップの開催と並行して、本研究の調査分析の結果に基づく研究報告の公刊(2024年度)を準備する。
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Causes of Carryover |
本年度の研究費は90万円ほど残っていた。それは予定していた資料複写費及び調査旅費であった。中国の新型コロナウイルス禍のため、研究グループのメンバーは中国への出張は実現できなかっただけではなく、中国側の研究協力者の国内の出張も厳しかったため、旅費や遠方の資料館の史資料の複写ができなった。次年度では、追加調査を行い、昨年度実現できなかった中国側の資料館での史資料調査や研究対象へのインタビュー調査を年度前半に行い、研究資料のデータベース化の作業を加速することで、研究費の消化ができると考えている。
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Research Products
(48 results)