2022 Fiscal Year Research-status Report
An Elucidation of the Structure of Regional Societies in the Tang Period Based on Stone Inscriptions and the Building of an International Basis for Publishing Studies of Epigraphy
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21K00912
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
気賀沢 保規 明治大学, 研究・知財戦略機構(駿河台), 研究推進員 (10100918)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
速水 大 明治大学, 研究・知財戦略機構(駿河台), 研究推進員 (60810497)
竹内 洋介 東洋大学, 人間科学総合研究所, 客員研究員 (40746210)
梶山 智史 明治大学, 研究・知財戦略機構(駿河台), 研究推進員 (20615679)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 唐代墓誌 / 墓誌埋葬地の偏在性 / 府兵軍府(折衝府) / 隋唐仏教寺院 / 隋唐国家論 / 隋唐仏教社会 |
Outline of Annual Research Achievements |
本科研費は、中国で出土し報告された唐代とその前後の北朝・隋代および五代・宋代の墓誌資料を整理集積し、各時代の「墓誌所在総合目録」を作成すること、あわせて唐代300年を中心とする墓誌資料の分析に基づく唐代地方社会の構造解明、これらの実績にもとづく石刻研究の国際発信の基盤を確立すること、を目指している。それにむけて2022年度は、前年度につづき各時代の墓誌データの集積と関係資料の採集につとめた。またその作業と並行して先年刊行した『新編唐代墓誌所在総合目録』の全面的再点検も実施し、次の「総合目録」を刊行する基盤整備にもつとめた。 本科研費研究が開始される前までに当研究班で把握できた唐代墓誌は、約1万3千点ほどであったが、その後の2年間で1万5千点近くにまで及んでいる。この作業の過程で、墓誌文中に残る埋葬地、寺院、軍府(折衝府)などの情報の抽出もあわせて進め、最後の成果につなげる準備も行っている。 並行して、墓誌資料の採集のために、従来漏れていた中国考古系雑誌類や地方志類に所載されるデータの調査と整理も手掛けている。ただし中国考古系雑誌類は多岐にわたり、まだ具体的な形にまでは届かず、現在鋭意作業中である。地方志類の調査も一定の進展をみているが、まだそれらを唐代墓誌の整理に組み込む前段階にある。 他方、研究班員による研究会は約2か月に一度のペースで、特定の墓誌・石刻史料を取り上げ検討する試みをつづけ、墓誌から見える唐代社会の様相への認識を深めた。また当科研の母体となる明治大学東アジア石刻文物研究所が蒐集した唐代墓誌拓本が多数あり、それらを公刊するためのチェックをつづけた。 本研究での主たる柱は「唐代墓誌目録」の作成にある。限られた人員と経費でそれを進めることは大変であるが、成果は国内外から期待されており、その発信基盤を確立させるためにも全力で作業を展開させる所存である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本科研費では①唐代を中心とする墓誌資料とその所在(掲載・報告書)を収集整理、②その結果を「唐代墓誌所在目録」を作成し公表すること、③並行して墓誌個々の中身を検討し、埋葬地やその他の問題のデータを集積すること、④各研究分担者ごとに担当領域(時代)の「墓誌目録」を作成すること、⑤その上で唐代墓誌のデータに基づく墓誌文化論(墓誌地域論)を構築すること、⑥共同の研究会を重視し、墓誌石刻への認識を深め、また多様な情報を共有する場にすること、⑦そのような蓄積の上に、東アジア墓誌石刻研究の発信基盤を構築すること、などを目指している。 上記の仕事については、それぞれ主分担を定めて前進をはかっているが、コロナ禍が流行するなかで、図書館が予定通り利用できず、中国との情報交換や資料入手が難しくなり、また各分担者のオンラインによる授業等で別途の忙しさに追われるなどの事情があり、全てが予定通りには進んでいない。そのため、考古系雑誌や中国地方志の調査は、次年度(2023年度)に力を注ぐことになっている。 近年、墓誌資料の重要さが中国で一層注目されている。その火付け役の一端に私どもの手がけてきた仕事があり、中国側を含む内外の学界から一定の評価が与えられていると認識する。そうした立場から、この科研費の下で国際シンポジウムあるいは研究報告会を計画しているが、コロナ問題などからまだ具体化に至っていない。これも次年度でオンラインにより実施することを考えている。 研究代表者も分担者も、この限られた研究費を大切に、できる限りの成果をあげたいと真剣に取り組んでおり、それぞれの柱に遅れもあっても、どれも取り残さずに少しでも前に進めたいと努力していることを了解いただきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナ禍が沈静化するなか、国内大学では対面授業が広がり、図書館利用の制限も少しずつ解け、他方中国で刊行される墓誌石刻の報告書や学術誌も増加してきている。そうした状況をふまえ、これまで以上に唐代墓誌石刻を中心にデータの集積に努め、本科研成果の一番の柱をなす新「唐代墓誌所在目録」の公刊に向けて力を集中する。 それにあたり当研究班では、まず各メンバーの主担当領域(時代)と各人の具体的な作業内容、今後のスケジュール等を改めて確認し、定期的な研究会を通じて進捗状況の確認や資料内容などの情報共有に努め、研究進展の問題意識を高める。 研究の深化と進展のためには班内の研究会とともに、外部に開かれた研究会も重要であり、本年度までに開くことのできなかった中国側との研究交流の機会(オンラインによるシンポジウム)は是非実現させ、具体的な成果につながる足場を築く。その成果内容は雑誌「東アジア石刻研究」第10号記念号として公刊を予定する。 本研究の遅れを取り戻すためには、以上のように「唐代墓誌目録」のためのデータ集積に力を入れることが中心になるが、これまで2年間の作業を通じて基盤の整備はほぼ終わり、次は墓誌データの入力と、それをふまえた詳細な点検にかかっている。そのために定期的な研究会などをつうじて互いに意識を高め、協力できる体制を組んでいきたい。 次年度(本科研の最終年次)の最終段階までに、新「唐代墓誌所在目録」の基幹確立、唐代中心とする国際シンポジウム(国際石刻研究集会)の開催および「東アジア石刻研究」特集号刊行、本科研研究班による「墓誌石刻論集」の集約、を果たすことを具体的目標にしている。
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Causes of Carryover |
次年度使用額として生じた金額83,343円は、年度末の2023年3月末に支払うことを想定して用意されていた謝金(アルバイト代)と中国刊行の図書購入分である。このうち謝金の仕事は3月末日まで継続したため、支払い手続きが間に合わず、次年度にまわされることになった。中国から購入を予定していた図書(報告書)は刊行(入手)が期限内に間に合わず、そのため支払いは次年度にまわされた。いずれも次年度において、できるだけ早く処理する予定である。
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Research Products
(15 results)