2021 Fiscal Year Research-status Report
ローマ帝国時代におけるヘレニズム的世界認識の継承と変容の研究
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21K00924
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
南雲 泰輔 山口大学, 人文学部, 准教授 (70735901)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ローマ帝国 / ローマ地理学 / 西洋古代地理学史 / ポンポニウス・メラ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ローマ帝国時代における世界認識の形成過程とその特質を明らかにすることを目的とするものである。具体的には、ローマ帝政前期において、これに先立つ古代ギリシアおよびヘレニズム時代の地理学的・地誌学的成果が、(1)ローマ人の地理学者によってどのように継承され、(2)どのように変容したか、という二つのプロセスに焦点を当てて考察したうえで、(3)そのような継承と変容の結果、ラテン語地理書は、ギリシア語地理書に対していかなる固有性・独自性を持つものとなったか、という問題について考究を試みる。中心的な考察対象として設定する史料は、ヘレニズム的世界認識の継承・変容の焦点となるべき、1世紀のイベリア半島出身の地理学者ポンポニウス・メラによる現存最古のラテン語地理書『地誌学(De chorographia)』全3巻である。 本年度は、研究計画の初年度であるため、まずは研究環境の整備から着手した。ポンポニウス・メラにかんする研究資料だけでなく、西洋古代地理学史・地図学史にかんする研究資料を可能な限り包括的・体系的に収集・整理し、関連する学界の研究動向を正確に把握するよう努めるとともに、次年度以降に実施を予定している史料分析のために必要となる研究環境の整備を行なった。このほか、街道・城壁・墓地というローマ時代のインフラストラクチャーに着目し、ローマ人の死と墓地にたいする感情を分析した論文(『生き方と感情の歴史学:古代ギリシア・ローマ世界の深層を求めて』(山川出版社、2021年4月刊行)所収)、および、ポイティンガー図に代表される「古代末期」の世界観を、ギリシア・ヘレニズム・ローマの地理学的・地誌学的系譜のなかに位置づけ、その複層性の指摘を試みた論文(『岩波講座世界歴史03ローマ帝国と西アジア 前3-7世紀』(岩波書店、2021年12月刊行)所収)の二篇を発表することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの進捗状況について、本研究課題に関連する研究資料の調査・収集は、おおむね当初の計画通り進めることができ、また、これらの作業に基づく研究動向の摂取と把握を通じて、本研究課題の今後の基本的な方向性をも確認することができたと考えている。併せて、ポンポニウス・メラ著『地誌学』の既存の諸近代語訳の検討も一部開始することができた。したがって、「おおむね順調に進展している」と判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点での進捗状況はおおむね順調と判断されるため、今後の研究の推進方策としては、基本的には当初策定した研究計画に沿って実施することを考えている。すなわち、今後は、ポンポニウス・メラ著『地誌学』の原典テキストを1年に1巻づつ正確に読解し、内容の検討を行なう予定である。次年度は、同書第1巻の翻訳・注解を作成することが目標である。ただし、今後の新型コロナウィルス感染症の流行状況の変化により、研究の遂行に予期せぬ影響が及ぶ可能性がある場合、その都度最善の方策を考えたい。
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Research Products
(3 results)