2023 Fiscal Year Research-status Report
中世ロシアへのビザンツ法の流入:ロシアの政治権力・社会構造の淵源を求めて
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21K00928
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Research Institution | Gifu Shotoku Gakuen University |
Principal Investigator |
宮野 裕 岐阜聖徳学園大学, 教育学部, 教授 (50312327)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ルーシ |
Outline of Annual Research Achievements |
23年度は前年度までに揃えた個々の教会法研究に関連して、ビザンツから中世ルーシに伝わった君主概念、特に正教君主の専制君主概念の研究を進め、過去の研究の杓子定規的な結論ではなく、個々の事例を検討しながら、全体として流入した君主概念を見直し、これを『西洋中世研究』に発表した。その結果、使徒規則のルーシへの流入の際に見られたような土着的解釈変更の考え方の重要性を再確認することが出来た。また、中世ルーシを考えるにあたって、同様に現代ロシアを考えるにあたってその根底として重要視されているモンゴル支配、いわゆる「タタールのくびき」について、一般向け図書を刊行した(『「ロシア」は、いかにして生まれたか』)。執筆に際しては、一部のビザンツ研究者から度々主張されるところの、ビザンツとロシアとの歴史的に緊密な関係を強調する議論に対し、それを相対化することを念頭に置いた。ただしこれは、科研の本研究の意味を減じるものではない。ルーシ、そしてロシアの教会法的基盤は明らかにビザンツの影響が大きい。ただ、様々な側面が全てビザンツに発出すると考えることへの異議申し立てなのである。この点は、前年の「大会特集」というかたちであるが、『西洋史研究』においても発表した。こちらはむしろ真逆であり、モンゴル支配の過剰な厳しさを指摘する研究への異議申し立ててであった。また、戦争でロシアやウクライナへの渡航が不可能であり、それ故夏期にイスタンブールで総主教座および他の正教会・修道院を訪問し、研鑽を積んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
学内業務(入試統括)に加え、学外からの原稿依頼・報告依頼が続き、全体としてはためになっているものの、狭義の本研究の進捗はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
個々の材料は昨年度までで見直しが進んだので、全体としてそれらをまとめることが課題になる。そのため、全体としての位置づけをロシアの研究者コロコジナやベリャコヴァを読み直して進めるというほかにない。
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Causes of Carryover |
ロシアのウクライナ侵攻により渡航が困難になったことおよび学内業務の過多に尽きるが、次年度からは役を外れ、またヘルシンキ・ヴィルニュス等の他の図書館も利用できるので、そちらでカバーしたい。
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Research Products
(3 results)