2021 Fiscal Year Research-status Report
近世ドイツ語圏の日本観形成にみられる対トルコ戦争の影響―「宗派化」に注目して
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21K00933
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
大場 はるか 久留米大学, 文学部, 准教授 (40758637)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 神聖ローマ帝国 / イエズス会 / 日本観 / 対トルコ戦争 / キリシタン / フランシスコ・ザビエル / 大友宗麟 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は5月~8月にかけて3つの口頭発表を実施し、大友宗麟の前で異教徒とザビエルが宗教論争を戦わせる場面を描写した造形芸術に関する研究の構想と、第一段階目の研究成果などを発表した。具体的には、チェコのオルモウツ、ポーランドのブロツワフ、ドイツ南部のシャンミュンスターに残されている造形芸術を比較し、シャンミュンスターの造形芸術のみ、山口の大内義隆が描写されている可能性があることを指摘した。これらの発表の際の質疑応答を通して得られた知識をもとに、秋から冬にかけて同様のテーマの研究を継続し、年度末の2022年3月にはドイツ語圏のイエズス会史協会(Jesuitica)がスイスのツークで開催した例会において、第二段階目の研究成果の口頭発表を行った。スイスでは、大友宗麟とザビエルの対峙の場面が、諸侯改宗、宗教論争、ザビエルの聖性の礼賛という3つの観点から描かれている可能性があることを指摘した。 以上の活動のほか、当初の研究計画には含まれていなかったが、バロック演劇研究の大家であったMargret Dietrich(もとウィーン大学教授,オーストリア科学アカデミー演劇部門のもと部門長)の遺稿の中に日本関係のイエズス会劇の史料が膨大に残されていることが判明したため、オーストリア科学アカデミーの演劇部門の研究者と協力し、Dietrichの史料の整理を開始した。すぐに科研費の研究に使用できる史料も含まれているため、整理を手伝いながら来年度以降はこれらの史料も研究に使用していくことにした。この史料を活用すれば、予定していた研究が部分的に早く進められる可能性があるためである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2021年度の夏に海外で史料調査を実施する予定であったが、新型コロナウィルス拡大のため勤務校から渡航許可が下りず、断念することになった。トルコ観に関する先行研究の調査はある程度進められたが、2022年度にオーストリアへ在外研究に赴くことになったため、この準備に時間を取られて予定より進度が遅れてしまった。ただ、この遅れは2022年度の在外研究中に取り戻せるだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は1年間オーストリアのウィーンを拠点に在外研究に従事できることになったため、2021年度にできなかった現地調査を可能な限り集中的に実施したい。また、ここにきて新たにスイスのルツェルンにある文書館に、演劇学者でもあったThomas Immoos神父の遺稿があることが判明したため、この遺稿の調査も今後の研究に含めることにした。というのも、Immoosはスイスのドイツ語圏で上演された日本関係のイエズス会劇について相当な数の史料を収集しておられたようだからである。Immoosは上述のMargret Dietrichと親しく、多くの書簡を交わして日本関係のイエズス会劇の研究を進めていた。このため、ImmoosとDietrichの遺稿の調査もしながら当初から予定していた研究を推進していきたい。
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Causes of Carryover |
2月28日から3月18日にかけてオーストリアおよびスイスで海外出張(史料調査・学会発表)を実施したが、この事務処理は年度内に終えられなかった。その理由は、新型コロナウィルス対策のためである。3月の海外出張と4月1日からの在外研究との間に一時帰国を入れると、コロナの状況によっては自宅待機が求められるなど予定が大幅に狂う可能性が考えられたため、勤務校から許可を得て、一時帰国せずに3月19日から3月末まで平日は年休をとり、4月1日より現地で在外研究に入った。年休をとったこともあり、出張の事務処理を年度内に終えることができなかった。このほか、2021年度は使用予定であった書籍購入費を節約し、2022年度の在外研究中に現地で史料調査に使える研究費を増やした。必要な書籍は2021年度中は自費で購入した。
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Remarks |
日本関係のイエズス会劇の研究を進めていたオーストリア科学アカデミー演劇部門のもと部門長るMargret Dietrichの遺稿を、同アカデミーと大妻女子大学の渡邉顕彦教授(専門:西洋古典文学)と共同で整理しはじめた。2021年度は大妻女子大学の資金で進めたが、2022年度からはこの史料整理も私自身の科研費の研究に含めていく。遺稿の中には科研の研究に使える史料が多く含まれていた。
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Research Products
(7 results)