2022 Fiscal Year Research-status Report
紀元千年のヨーロッパにおける生と死-ティートマル『年代記』に見る幻視・徴・亡 霊
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21K00943
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
三佐川 亮宏 東海大学, 文学部, 教授 (20239213)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | キリスト教 / 異教 / シンクレティズム / ティートマル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、メールゼブルク司教ティートマル(975-1018年)の『年代記』(1012~1018年成立)を対象に、知的エリートとしての聖職者層における終末論の高揚、異教的宗教観を色濃く残した、ザクセンのキリスト教的民衆世界、そして隣接するスラヴ人の異教世界、この性格の異なる3者の各々の宗教観・死生観の特徴を実証的に解明することを目的とする。 初年度の2021年度は、約50箇所に及ぶ死をめぐる様々な題材を選り抜き、このうち約30例について、キリスト教と異教に大別したうえで、各種の類型化(例えば、幻視、亡霊、生ける死者、悪魔、不可思議な自然現象、吉兆に関する予言、祭祀、等々)を試みた。2年目となる2022年度は、その継続として残された約20例について類型化の作業を継続した。 また、上記作業と並行して、他地域(北欧、フランス)の研究成果を積極的に援用し、相互比較の接点を見つけ出す作業も開始した。50例の中にはティートマル自身の叙述が時に明解さを欠き、明確に類型化するだけの情報を欠くケースも少なからずある。こうした事例の分析には、他地域の研究成果との突き合わせが不可欠となるからである。2022年度は主として、J・ル・ゴフ、J・C・シュミットの研究に依拠しつつ、フランスの事例について検討した。早くにキリスト教化の進行した、いわば先進国としてのフランスと、長らく異教に留まっていた北辺のザクセン地方との対比は、興味深い成果をもたらすものと考えられる。 なお、本研究と密接に関わるオットー朝4大叙述史料のうち2点、すなわちクレモナのリウドルフ『報復の書』、ヴァイセンブルクのアーダルベルト『レーギノ年代記続編』の翻訳が完成し、「令和2年度科学研究費補助金・研究成果公開促進費」の交付を申請した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国内では特に入手困難な文献、すなわち地域史・教会史(特にザクセン、テューリンゲン地方)、言語史(ポーランド語、ソルブ語等)関係の特殊研究を、夏期休暇を利用してドイツの図書館で調査・収集する計画は、新型コロナウイルスの感染状況が改善せず、2022年度も実現できなかった。このため、前年度と同じく、既に入手した文献を中心とする分析作業となったが、概ね目標に近い形で研究を展開することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度に現地調査が実現したとしても、研究成果に盛り込むためにはなお一定の時間を要するため、研究期間を当初予定の3年から4年に変更することを検討している。
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Causes of Carryover |
2022年度にドイツでの資料調査・収集を予定していたが、コロナ禍のため実現には至らなかった。2023年度に状況が好転した場合には、次年度使用額をこれに充てる予定である。
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Research Products
(3 results)