2023 Fiscal Year Research-status Report
The Duke of Burgundy and Flemish City Government Finance in the 15th century
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21K00945
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
畑 奈保美 東洋大学, 人間科学総合研究所, 客員研究員 (60302064)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | フランドル / ブルゴーニュ宮廷 / 都市財政 / 宮廷貴族 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、中世ヨーロッパの都市的地域フランドルに、ブルゴーニュ公の宮廷の影響力がどのように及び、都市社会がどのように変化していくのかを、フランドルの主要な宮廷所在都市ブルッヘの都市財政、とりわけ都市によるブルゴーニュ公やその宮廷のための支出から考察する。2023年度は、前年度末におこなったベルギーでの現地調査で収集した史資料、とくにブルッヘ市立文書館所蔵の都市会計帳簿、ぶどう酒贈与帳簿、都市カルチュラリア等の分析を進め、都市ブルッヘにおける宮廷関係者への贈与の事例、その背景を検討し、成果公表に向けての準備をおこなった。また、都市ブルッヘとブルゴーニュ宮廷の関係を考えるには、ブルゴーニュ公およびその家族(とりわけ、影響力の強い公妃たち)、金羊毛騎士団など側近の貴族、聖職者たちの活動にも注目する必要があり、2023年度においては二代のブルゴーニュ公に仕えたフランドル貴族ユーグ・ド・ラノワ(1384-1456)の活動を書籍『脇役たちの西洋史』の一章として発表した。そこでは、1430年代以降、イングランド・フランス・ブルゴーニュの政治・経済状況が複雑化するなかで、イングランドとの通商関係を不可欠とするフランドル都市の立場をユーグ・ド・ラノワが代弁する形で、君主ブルゴーニュ公に外交・軍事面で建言をおこない、対立するイングランドとフランスの2つの王国の間でイングランドとフランドルに適用される通商和平を締結させるに至ったことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2023年度は前年度に続いてベルギーでの史料調査をおこなう予定を立てていたものの、前年度に収集した史資料の整理・分析に予想よりも時間がかかったことに加え、またオンラインで閲覧できる史資料の拡大に伴い現地調査の可否や範囲について計画の再検討が必要になったことなどから、海外での調査を2024年度に延期した。
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Strategy for Future Research Activity |
中世フランドル地域諸都市の財政・会計についての研究状況の整理とともに、都市ブルッヘの会計帳簿、都市カルチュラリア等から、都市ブルッヘにおけるブルゴーニュ宮廷関係者への贈与の事例、その背景を検討していく。とりわけブルゴーニュ公フィリップ・ル・ボンと公妃イザベル・ド・ポルテュガルについては、彼らの活動を時系列的に整理してから都市ブルッヘとの関わりを考察したい。また、これまでの成果から引き続き都市ブルッヘのぶどう酒贈与帳簿を分析し、都市会計帳簿その他の情報との照合や先の時代の状況との比較を進める。そして、昨年度には見合わせた海外渡航を実施し、文書館、関連史跡での調査、現地研究者からの情報収集、図書館での関係文献収集をおこなう。
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Causes of Carryover |
当初予定していた海外現地調査を延期したこと、および、国内で日本西洋史学会への参加をその時の健康上の理由から見合わせたことから、旅費を使用しなかったため、次年度使用額が生じた。今年度は海外現地調査を実施するとともに、国内で学会に参加するため、海外・国内旅費を使用する。
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