2022 Fiscal Year Research-status Report
Basic Research on the actual situations of the Imperial Court in the Roman Empire
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21K00946
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Research Institution | Tokyo City University |
Principal Investigator |
新保 良明 東京都市大学, 共通教育部, 教授 (60206331)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 皇帝裁判 / 勅答 / 大逆罪 / ローマ法 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は68年のネロ帝自殺後の皇帝裁判事例を抽出することとし、193年のディディウス・ユリアヌス帝の殺害までの125年間を取り上げた。 狭義の裁判事例は被告の元老院議員51名、件数としては28件を数えた。これらの裁判はドミティアヌス帝(位81~96年)とコンモドゥス帝(位180~192年)の治世下に集中している。しかも、皇帝が恣意的に司法権を乱用したという側面が強く認められた。しかし逆に言えば、両帝以外の皇帝たちに皇帝裁判の乱用は認められないということである。この点は、ネロの暴政を踏まえて、ウェスパシアヌス帝(位69~79年)が「元老院議員を殺さぬ誓い」を即位時に立てて以降、多くの皇帝がこれに倣ったことに起因すると考えられる。また上記の期間内に五賢帝時代が84年間も続いたという事実も注目される。 一方、広義の皇帝裁判事例として、訴訟当事者が皇帝に裁定を求める請願状を提出し、これに皇帝が書面で指示を与えるという「勅答rescriptum」システムが知られているが、その史料は法的価値を有するものとして『学説彙纂Digesta』や『ユスティニアヌス法典』などから確認される。これらの法制史料から、上記の125年間に69件が確認される。この数字は予想外であった。 以上のように、125年間に狭義、広義の皇帝裁判は計97件を数えた。確かに多いとは言えない数値であるが、これは残存史料に強く左右されることを忘れてはならない。重要なのはこの時代の多くの皇帝たちに何らかの司法活動が認められるという事実である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナ渦で出張ができず、皇帝裁判事例の抽出を進めるだけで精一杯で、しかもその作業も遅れている。その結果、全体像が不透明で、細かな分析にまでは至っていないのが実状である。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は最終年度となるため、193年からセウェルス・アレクサンデル帝(位222~235年)までの皇帝裁判事例を抽出することにしたい。
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Causes of Carryover |
コロナ渦で出張ができず、支出が計画を下回った。 次年度は上記期間(193~235年)に関する研究書を購入するとともに、海外出張をしたい。
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