2021 Fiscal Year Research-status Report
中世後期フランス・ネーデルラントにおける「魂の統治」と「聖なるものへのアクセス」
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21K00948
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Research Institution | Notre Dame Seishin University |
Principal Investigator |
轟木 広太郎 ノートルダム清心女子大学, 文学部, 准教授 (60399061)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
図師 宣忠 近畿大学, 文芸学部, 准教授 (60515352)
青谷 秀紀 明治大学, 文学部, 専任准教授 (80403210)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 告解 / 異端審問 / 聖性 / フランス / ネーデルラント / 統治 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中世後期のフランスとネーデルラントを対象として、救霊にかかわるローマ=カトリック教会の思想・実践を「魂の統治」という観点から、また世俗の統治実践を「聖性」とのかかわりにおいて研究することを通じて、中世後期の政治・宗教史を独自な視点から見直そうというものであるが、研究計画初年度として基礎的な作業を進めることができた。 まず、轟木は13世紀半ばから14世紀初頭のフランス王権の地方監察について、そこに君主自身の魂の救いという問題と王国の救済という問題が絡んでいることを示した論文を発表したほか、告解を扱った説教関連史料(ハイステルバッパのカエサリウス『奇跡の対話』)の分析を進めた。図師は、本研究で「魂の統治」の特殊形態と規定した異端審問について、審問官たちの作成した各種記録類がどのように彼らの実務を支えていたかを明らかにする論文を発表した。青谷は15世紀のネーデルラントにおける都市の騒擾を諸侯統治や都市共同体統治と関連づける論文を発表した。 また、今年度は2度の研究会を遠隔開催で実施した。まず12月の第1回研究会では、今年度のそれぞれの研究の進捗状況について報告するとともに、それを踏まえた今後の計画について議論した。続く3月の第2回研究会では、第1回の話し合いを踏まえ、中世後期のヨーロッパ全体を対象とする比較政治史の近著(John Watts, The Making of Polites: Europe, 1300-1500, 2014)について、轟木が書評報告(ただし、著作の前半のみ)を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画初年度として、それぞれが基礎的な作業を進めるとともに、ある程度の成果をあげることができた。轟木はフランス王権と聖性・救霊の関係、および告解の展開というふたつのテーマについて研究を進捗させた。図師は、南フランスの異端審問の史料と実務について論考をあらわし、「魂の統治」の特殊形態として異端審問制度について考察を前進させた。青谷は、ネーデルラントの都市共同体の統治全般について研究を進捗させた。
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Strategy for Future Research Activity |
6月に予定している初回の研究会では、轟木が上記「概要」に記した研究書の後半部の検討を行うほか、夏、冬、春あわせて3回の研究会を開催する。そこでは、3人がそれぞれ以下のテーマで研究報告を行う予定である。 轟木…フィリップ4世王権と聖性、あるいは説教関連史料のなかの救霊。 図師…「魂の統治」の観点から見た南フランス異端審問。 青谷…中世後期ネーデルラントにおける伯権力と聖性。
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Causes of Carryover |
当初、研究会のために旅費を見込んでいたが、コロナ禍が続いたことからやむなくリモート開催としたため、その分の支出がなかったことによる。
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Research Products
(4 results)