2022 Fiscal Year Research-status Report
中世後期フランス・ネーデルラントにおける「魂の統治」と「聖なるものへのアクセス」
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21K00948
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Research Institution | Notre Dame Seishin University |
Principal Investigator |
轟木 広太郎 ノートルダム清心女子大学, 文学部, 准教授 (60399061)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
図師 宣忠 甲南大学, 文学部, 教授 (60515352)
青谷 秀紀 明治大学, 文学部, 専任教授 (80403210)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 魂の統治 / 聖性 / フランス / ネーデルラント / 異端 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ローマ=カトリック教会による「魂の統治」と、世俗統治者による「聖性」へのアクセスの研究を通じて、中世後期の政治・宗教史にあらたな局面を切り開くことを目指すものであるが、前年度3人ともが論文を発表したこともあり、今年度はもっぱら次の成果に向けての基礎作業に費やした。 まず、轟木はふたつの方向で仕事を進めた。ひとつは本研究の全体像にかかわるもので、中世後期の王国の統治構造について理解を深めるとともに、国王戴冠式や王権と神学思想との関係性(とくにいわゆる「王の二つの身体」)について小論を執筆した(2023年度中に公刊される予定)。もうひとつは個別課題として、フィリップ4世時代のテンプル騎士団事件について史料の検討進めたことである。また、図師は引き続き南フランスの異端審問について、青谷は中世末期から近世初頭のネーデルラントにおける政治権力について研究を進めた。 また、今年度は3度の研究会を開催した(うち1回は遠隔、残り2回は対面)。まず6月の第1回研究会では、前年度の続きとして、中世後期のヨーロッパ全体を対象とする比較政治史の近著(John Watts, The Making of Polites: Europe, 1300-1500, 2014)について、轟木が書評報告(著作後半部)を行った。第2回研究会(8月)では、青谷が中近世移行期のネーデルラントに登場した地誌にかかわる史料群をとりあげ、それが当時の政治権力とどのように関係していたかを論じた。第3回研究会(3月)では、図師が南フランスの異端審問記録を史料論的に検討する報告を行ったほか、ゲストとして西岡健司氏(大手前大学)と中村敦子氏(愛知学院大学)を招き、それぞれ中世盛期のスコットランドにおける教皇特使の裁判史料、ウィリアム征服王の寄進証書について報告いただいた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度計画した通り、メンバーがそれぞれ1回ずつ報告を行う計3回の研究会を実施することができた。 つぎに、全体の取りまとめを行う代表者(轟木)が本研究の全体像の構築を進めたほか、個々のメンバーもそれぞれに研究課題(以下)を進めることができた。 轟木はフィリップ4世治下のテンプル騎士団事件について各種の史料的検討を進めた。図師は南フランスの異端審問研究をとくに史料論的な方向において継続し、青谷はネーデルラントの政治権力について、とくに歴史地理にかかわる史料を中心に展開した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度もメンバーそれぞれが1回報告を行う研究会を計3回開催するほか、コロナ禍に一区切りついたことを受けて、全員がそれぞれ海外出張に出ることを予定している。 轟木は代表者として、「魂の統治」と世俗君主による「聖性」へのアクセスについての全体像をより精緻にするとともに、テンプル騎士団事件についての検討を継続するほか、告解についての研究を再開する。 図師は南フランスの異端審問研究を継続し、青谷はネーデルラントにおける「魂の統治」にかかわる研究を開始する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍にあったため、海外渡航を控えたメンバーがいたため。
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Research Products
(4 results)