2022 Fiscal Year Research-status Report
古墳時代後期から終末期における陶棺生産・消費システムの研究
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21K00964
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Research Institution | Kashihara Archaeological Institute , Nara prefecture |
Principal Investigator |
絹畠 歩 奈良県立橿原考古学研究所, 調査部調査課, 主任研究員 (50638103)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥山 誠義 奈良県立橿原考古学研究所, 企画学芸部資料課, 総括研究員 (90421916)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 日本考古学 / 古墳時代 / 陶棺 / 生産・消費システム / 彩色顔料 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、2021年度に行った基礎的な作業を基にして、各種検討を行った。 製作側視点の検討としては、これまで検討を行ってきた吉備地域・畿内地域の資料の検討を進めたほか、新たに東国地域の陶棺の系譜関係及び特性を明らかにするためにに各地へ出張し、陶棺の形態観察、およびフォトグラメトリによる三次元データを作成した。これにより、東国地域の陶棺の系譜関係及び製作技術の類似度について明らかにすることができた。 採用側視点の検討としては、陶棺採用古墳の検討を行い、周辺古墳との関係、立地などの検討を行った。これにより、周辺古墳群及び古墳内の中での陶棺の採用段階および継承性を明らかにすることができ、継承性の強い地域とそうではない地域が存在することが明らかとなり、さらに副葬品構成とも相関することがあることが明らかになった。また、東国地域の陶棺の出土古墳の現地踏査を進めることができた。 陶棺の彩色顔料の分析としては、國學院大學博物館所蔵の陶棺を借用・分析中である。今後畿内地域の彩色顔料を有する陶棺と比較・検討を行う予定である。 研究成果の一部に関しては、採用側の検討として首長墓に採用される陶棺の首長墓系譜における意義に関する成果を古代学研究会2022年度拡大例会で発表したほか、香川県高松市内出土の陶棺について製作・採用側両者の論理を検討し、その意義を明らかにした成果を高松市埋蔵文化財センター紀要に投稿し、掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度は2か年目ということもあり、多くの出張を計画していたが、先の読めないコロナ禍の中で、慎重を期すために、最低限の出張にとどめざるを得なかった。上半期が特に先を読むことができず、下半期に集中して出張せざるを得なかった。一方、これまで検討を進めることができていなかった東国地域について検討を行うことができ、彩色顔料の分析を行うなど、多くの成果を上げることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる2023年度は、これまでの検討成果を総括する作業を行っていく予定である。陶棺の最大集中地帯である吉備地域について、これまで検討してきた成果をまとめるとともに、補足的に出張し、検討を進めたい。製作側の検討としては、これまで現地で入手してきた三次元画像の比較検討を行い、陶棺におけるフォトグラメトリの有用性を明らかにしたい。また各地の生産窯と陶棺との関係を検討し、生産・消費過程の検討を行う。採用側の検討としては、各地の採用過程を相互比較し、各地域の陶棺採用の意義及び被葬者像を明らかにしたい。また、彩色顔料の検討により、各地域間の葬送儀礼の共通性、および彩色陶棺の特性を明らかにしたい。
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Causes of Carryover |
2022年度は、先の読めないコロナ禍が引き続いたため、出張計画を変更せざるを得なかった。そのため、予定していた出張よりも少なくならざるを得なかった。さらに、予定していた補助を行う学生が様々な理由で採用することができなかったため、人件費を使用することができなかった。2023年度は、前年度分の出張を追加で行うことに加え、新規に補助者を採用する、物品費などに振り替える、ことなどで使用を行っていきたい。
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