2022 Fiscal Year Research-status Report
Theoretical and methodological integration of processual and Japanese archaeology
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21K00968
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
阿子島 香 東北大学, 文学研究科, 名誉教授 (10142902)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | プロセス考古学 / 考古学アーカイブス / ビンフォード / ミドルレンジセオリー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、アメリカを主に発達したプロセス考古学と、伝統的な日本考古学との間にある、方法論的、理論的な大きな差異を軽減し、世界でも高水準にある日本考古学の発掘調査および資料分析法を、世界の歴史理論および人類学理論のなかに、的確に位置付けていくことを目指し、今年度も基礎的分析を中心に進めた。両国の学史的な検討を進め、理論的差異が顕在化するテーマを探求し、先史時代の中でも、まず後期旧石器時代の東北地方の遺跡内容を取り上げて、人間集団の適応戦略という観点から再検討し、論文を発表した。東北地方の旧石器研究をプロセス考古学の理論で捉え直し、ビンフォードによる狩猟採集民の民族考古学理論の枠組みで分析した。宮城県・山形県の石刃石器群の文化は、コレクター型の適応戦略から理解可能であることを、仮説的に提示した。通時的な両国理論の比較では、史的唯物論に対するプロセス考古学の新進化主義人類学および経済人類学の対比が有効との認識を得て、旧石器・縄文・弥生・古墳・古代の各時期に関してプロセス考古学の観点から再検討を始めた。成果の一部は、研究代表者の本務である東北歴史博物館館長講座において、「読む館長講座」として、同館HPでPDF化(オープンアクセス)し、広く問いかけており反響もある。狩猟採集から農耕への変動プロセス、弥生首長制社会の仮説ほかを検討している。また本研究の二つの柱である、ビンフォード理論の詳細の正確な日本語による理解、東北大学の考古学研究史アーカイブについては、進行途上である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本務である東北歴史博物館長の業務と、本研究課題の実施との時間的調整を図るため、週休日を活用して、本課題の方法論的理論的分析を進めることができた。日本考古学の理論的研究史と研究水準を示す図書を購入し検討に加えた。アメリカ考古学会の文献研究を進めた。両国考古学の理論的融合を目指し、漠然とではなく焦点を絞り比較していく見通しを得た。後期旧石器文化の人類集団の適応戦略、狩猟採集社会の生産様式、農耕社会への変動、首長制社会から国家形成へのメカニズムなど、視点を明確化する見通しを得つつある。実際の研究史を資料からたどり、考古学の日本的特色を抽出するアーカイブス研究の部分は、時間的限定から限定的な進行状況となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
日本考古学史のアーカイブス研究については、東北大学文学研究科考古学研究室の現職教員の全面的な協力を得ているので、一時資料の分析を推進する方策である。資料のスキャン、予備的翻刻等には、本研究費の謝金を活用したい。新進化主義人類学に立脚するプロセス考古学の、東北地方の遺跡遺物への適用については、今年度は狩猟採集社会から農耕社会への変動に焦点をあてて、実地調査を行いたい。研究協力者に、東北歴史博物館副主任研究員の小野章太郎氏をお願いする予定である。宮城県大崎市北小松遺跡周辺の遺跡群において、環境復元と文化変動に着目して、縄文から弥生への文化変化のプロセス考古学的理解を進め、従来の蓄積された資料と合わせて総合的に考察する。日本考古学の理論的現状把握およびアメリカ考古学の最新状況の把握のため、図書資料の購入を進める。
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Causes of Carryover |
コロナ禍が収束しない状況において、出張、共同作業等について、自粛を継続した。今年度の計画では、両者を復活させて、次年度使用額を含めて実施する予定である。研究協力者と、宮城県内の縄文から弥生遺跡の現地調査を実施する計画である。研究代表者の本務と、本研究課題との間の時間的調整について、予定していたエフォートが確保できない面があった。今年度は、週休日の東北大学での活用により、研究計画の進行を図る。アーカイブス研究に同大学収蔵資料の利用を得る予定である。海外の文献取り寄せに、一部未着があった。新発注を含めて、研究推進を図る。
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Research Products
(2 results)