2023 Fiscal Year Research-status Report
南東マヤ地域における2次センター群の衰退プロセスに関する研究
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21K00975
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
寺崎 秀一郎 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (90287946)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 古代マヤ文明 / 3次元測量 / LiDAR |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年8月、約3週間にわたってホンジュラス共和国、コパン県に所在するエル・プエンテ遺跡において、3次元測量を実施した。今回、採用したのはスマートフォンのに搭載されているLiDARを活用した点が重要である。スマートフォンを利用した場合、初期費用を低額に抑えられ、開発途上国での普及、運用へのハードルが低いというメリットが挙げられる。さらに、ホンジュラス共和国内では世界遺産コパン遺跡でさえも世界測地系に準拠した基準点がないため、今回の調査では、LiDARとGNSSを連携し、世界測地系にのった測量図を作成することを目的とした。 GNSSと連携するために今回は(株)オプティムのGeo Scanシステムを採用した。測量には約3週間を要したが、当初の予想以上に時間がかかっている。その原因については、以下の諸三点が考えられる。 第一に基地局の設定については、ほぼ解決済みであり、今回、セメント杭を複数設置したので、次回以降もこれらの測量点をもとに復原ができるようになっている。第二に機材の発熱による問題については、機材の発熱はもとより、外気の影響も少なからず受けたため、測量アプリケーションがフリーズする状況が頻発した。対策としては、1ファイル=測量範囲を狭くして、機材がフリーズしても再測量の負担を減らすこと、スマートフォン用の冷却ファンを採用することによって改善できる。第三に衛星の受信状況については、植生をはじめ上空の障害物がある場合、GPS衛星の電波を受信できない。つまり、GPS衛星を利用する以上避けられない問題が挙げられるが、今後、測量に要する時間の短縮化は十分に可能だと考えられる。 測量データについては、Agisoft社のMetashapeで解析処理をおこなった。当該遺跡では1990年代に作図された平面図しかなかったため、今回の測量データは重要な成果と言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナ感染症による渡航制限とその後の現地の医療資源の問題があり、研究計画最初の2年間、現地調査を実施することができなかったことが進捗の遅れとなっていることは否めない。しかしながら、2023年度に実施した測量調査は、ほぼ予想通りの成果を達成することができた。一方で、急激に進む円安は現地でのコスト増や旅費の負担として重くなっていることも事実である。海外調査に際しては、こうした為替相場の急激な変動は研究活動の制約に繋がりかねないことは憂慮すべき事態と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は最終年度にあたるため、2023年度の成果を継続する形での測量調査と研究対象遺跡の最終放棄年代を明らかにするための出土資料の分析を2024年8月を軸に現地で実施することを予定している。また、2023年の成果については、早稲田大学大学院文学研究科研究紀要第70輯に投稿を予定しており、今夏の成果については、12月に開催される古代アメリカ学会での発表を計画している。それらの成果を総括した形での最終報告を2024年度中に作成する。
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Causes of Carryover |
2021~2022年度は新型コロナウィルス感染症の世界的な拡大と現地の医療資源の脆弱さにより、現地調査をおこなうことができなかったため、研究期間を1年間延長したことによる。
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