2022 Fiscal Year Research-status Report
The formation and foundation of the urban regional-system in early Chinese dynasty - Utilizing GIS in Archaeological study -
Project/Area Number |
21K00976
|
Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
西江 清高 南山大学, 人文学部, 教授 (10319288)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡部 展也 中部大学, 人文学部, 准教授 (10365497)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 中国考古学 / GIS / 環境考古学 / 初期王朝時代 / 集落考古学 / 都市 / 交通路 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は中国初期王朝時代の王都を、その「地域的基盤」に注目しながら地理考古学的方法によって研究するものである。具体的には、①研究室において位置情報を付した関連遺跡のデータベースを作成する。②データベースに基づいて各種の考古学GISの解析をおこなう。③関連して現地での調査(踏査)を実施する。以上の3点から構成される。 現地調査に関する③については、残念ながら2022年度もまたコロナ禍の影響をうけて、中国現地での調査が実施できない状況が続いた。一方、①については、中国の省別の遺跡データベースの作成を順調にすすすめてきた。そのデータベースに基づく研究である②については、(1)西周王朝時代の畿内的地域の都市間を結ぶ交通路の推定復元の論文を公刊した。(2)また、以前に作成済みの山東省の遺跡データベースに基づき、遺跡分布の長期的変動(新石器─初期王朝時代─秦漢帝国時代)について、各種空間情報の計量的な解析の結果を学会において発表した。 これらの研究から、初期王朝時代の王都とその地域的基盤の成り立ちの一端について論ずることができた。(1)については、西周王朝に存在した三つの王都(周原・豊鎬・洛邑)を結ぶ陸上交通路と河川交通路を自然環境と歴史的環境から復元した。従来論じられたことのない研究であり、初歩的とはいえ交通路を復元できたことで、西周王朝の「畿内的地域」の実態を、具体的な地理的空間にのせて論じられるようになった。(2)については、中原王朝の東側に隣接した「地域」である「山東」地区が、大陸の新石器時代(初期農耕時代)、中原王朝成立の時代、古代帝国成立の時代を経過する中で、どのような地域構造の変化を見せたのかをうかがうものである。山東地区の集落分布のパターンや集落の階層構成を長期的変動として観察し、初期国家の形成、古代帝国の形成といった歴史的画期を読み解く手がかりをもとめた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度(2021)および2年目(2022)において、当初の予想をこえてコロナ禍が長引いており、2022年度末においても中国現地での調査は困難な状況が続いている。それでも、「おおむね順調に進展している」と評価したのは、研究室におけるデータベースの作成とGIS的解析が、論文や研究発表の形であるていど具体的な成果をあげてきているからである。しかし本研究の完成には、現地における調査(踏査)が不可欠であり、また現地研究者との直接的な情報交換が不可欠である。研究期間後半において無理のない範囲での現地調査を計画したい。
|
Strategy for Future Research Activity |
「進捗状況」にも書いたように、コロナ禍による現地調査の停止状況は2022年度末においても継続している。とはいえ、日本においても中国においても、人的交流の正常化への動きは始まっており、希望的観測としては2023年度後半期には現地調査が開始できるかとおもわれる。一方で、この二年間の本研究前半を通じてわれわれは、研究対象地域を単に中国初期王朝時代の王都とその周辺地域に集中するのではなく、「王都」のもつ広域的な性格に注目することが重要であると認識しはじめている(「研究実績」にある山東地区の長期的変動の研究などを通じて)。その結果、現地で調査すべき対象地域は、王都遺跡が所在する中原地区(黄河中流域)だけではなく、より広範な諸地域を視野に入れるべきと考えるようになってきた。適切な表現ではないかもしれないが、研究の第一段階として「広く浅く」観察することが、初期王朝時代の王都の本質を理解する第一歩ではないかと考えるようになった。そのためにも可能な限り広域に関わる現地調査が必要となる。時間と予算には限りがあり、効率的な現地調査の計画をたてて実施することとしたい。またすでに膨大化しているデジタルデータの処理能力を高める必要もあり、マンパワーとともにPCなどハード面の能力を高めることも適切に計画したい。
|
Causes of Carryover |
この理由はおもにコロナ禍によって現地調査ができなかったことと、日本国内においても研究集会の開催や研究者間の移動を伴う情報交流の機会が持てなかったことにある。2023年度においては、すくなくとも後半期には現地中国での調査を開始できる可能性があり、助成金の主要な使用計画として考えている。また研究に必要なハード面として、GIS関連のデジタルデータ処理向上のために、より高性能のPCを導入することを計画しており、また現地調査に携行する高性能カメラの導入も計画している。さらにデータベース作成を加速・継続するために、経験あるアルバイトを雇うことを計画している。
|