2021 Fiscal Year Research-status Report
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21K00982
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Research Institution | Osaka City Cultural Properties Association |
Principal Investigator |
大庭 重信 一般財団法人大阪市文化財協会, 学芸部門, 課長代理 (60344355)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 水利 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度である2021年度は、大阪府大阪市長原遺跡の古代水田の灌漑システム復元のためのデータ整理を進め、ある程度の見通しを立てることができたが、論文としてまとめるまでには至らなかった。また、大阪地域の北部の遺跡出土木材の年代測定を行い、当該研究に必要な遺跡形成過程と地形環境復元のための基礎データを得た。 他地域の古代の灌漑システムを復元するための基礎作業として、地域の地形環境の把握を目的とした現行の水田調査を群馬県域と静岡県域の2地域で行った。10月には長野県更埴条里遺跡・川田条里遺跡・石川条里遺跡など、古代の条里地割を踏襲した現行水田を踏査し、水利系統や水源・水回りの方法を観察・把握した。また、古墳時代と古代の水田遺構が検出されている川田条里遺跡では、両時期の間で水源や水田の広がりが異なることを現地踏査で確認できた。3月にも静岡県域の遺跡を踏査し、藤枝市や菊川市など平野部が狭く、かつ河川の水量が少ない地域では、広域で開発する水田ではなく、谷を流れる小河川や湧水を利用した谷水田・扇状地末端の小規模な水田が弥生・古墳時代の一つの類型と設定しうることを確認できた。こうしたことから、条里地割にのっとった画一的な水田景観にみえる古代の水田においても、地形環境に応じた多様な水利環境を考慮する必要があることを認識できた。あわせて、3月19日の静岡県登呂博物館で行われた研究会で研究成果の一部を発表し、考古学・農学・文献史学の研究者との意見交換を通じて有益な知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は特に下半期に通常業務過多となり、当初予定していた論文の完成を断念した。また、新型コロナウイルス感染症の影響で他地域での調査が制限されたため、当初予定の群馬県域の資料調査と遺跡踏査を断念した。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目となる2022年度は、長原遺跡の古代水田の灌漑システムの復元を継続し、学術雑誌への論文投稿を行う。 合わせて他地域の遺跡の資料収集と踏査を継続するが、1年目に予定し、実施できなかった群馬県域の資料整理・遺跡踏査にも着手する予定である。
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Causes of Carryover |
残金が少額かつ端数であったため(41円)、次年度に繰り越すことにした。
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Research Products
(1 results)