2021 Fiscal Year Research-status Report
日本産漆由来の新規黄色ラッカーゼの機能と構造の解明
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21K00995
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
高野 麻理子 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (10353749)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ラッカーゼ / ウルシ |
Outline of Annual Research Achievements |
漆は、ウルシ樹木の樹液であり、重要文化財や伝統工芸品等に使用されてきた日本最古の塗料である。一般の塗料は溶媒の揮発乾燥により塗膜を生成するが、漆は主成分であるウルシオールがラッカーゼによって酸化重合することで、硬化乾燥して塗膜を作り塗料として機能する。これまでに多種多様の塗料が開発されたが、漆と同等の耐久性や質感を再現する塗料はない。したがって、漆特有の美しさや耐久性には、ウルシラッカーゼの機能が重要であると推定される。ウルシラッカーゼは、漆樹液の青色成分に含まれる青色の酸化酵素として分析されてきた。一方、漆樹液中の非青色成分は、青色ラッカーゼの精製過程で除去されるため分析されていなかった。 本課題では漆樹液の非青色成分中に新たな漆塗膜生成因子として発見した黄色ラッカーゼを精製、分析し、その機能と構造を解明することを目的とする。 R3年度は、ウルシラッカーゼ粗酵素の調製と新規黄色ラッカーゼの精製法の検討を行った。 ウルシ樹液よりアセトンパウダーを調製し精製水で抽出してラッカーゼ粗酵素を得た。カラムクロマトグラフィーの適合性を見るため、充填剤の量を変えてラッカーゼ粗酵素を添加し、溶出した黄色ラッカーゼの酵素活性を測定した。その結果、充填剤の量の増加に従って、黄色ラッカーゼの活性が低下することが判明し、イオン交換樹脂によるカラムクロマトグラフィーが精製に適していないことが明らかになった。そこで、同試料を等電点電気泳動により分離精製した結果、SDS-PAGEで単一バンドを示すバンドが得られた。以上の結果より、ウルシの新規黄色ラッカーゼの精製に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
R3年度の成果として、ウルシの黄色ラッカーゼの精製に成功したため。
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Strategy for Future Research Activity |
ウルシの新規黄色ラッカーゼの精製を繰り返し行い、試料を確保して、新規黄色ラッカーゼの酵素機能の分析を行う。
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Causes of Carryover |
残額847円は単独使用が困難なため、R4年度予算と合算して使用する。
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