2021 Fiscal Year Research-status Report
Can we predict the corrosion of archaeological iron artifacts in the stone chamber of the tumulus? – Establishment of evaluation method for in-situ preservation using numerical analysis
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21K00998
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Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
柳田 明進 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 研究員 (30733795)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小椋 大輔 京都大学, 工学研究科, 教授 (60283868)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 出土鉄製文化財 / 古墳 / 文化財保存 / 腐食 / 数値解析 / X線CT / 画像解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、古墳石室内での鉄製文化財の腐食モデルを構築し、数値解析によってその腐食を予測する技術を確立することであり、具体的には、1)古墳を模擬した土中空間において実施した腐食実験の結果に基づき、石室での鉄製文化財の腐食をモデル化する。さらに、実際の鉄製文化財に則したモデルに改良するために、2)出土鉄製文化財の腐食層の厚みや空隙率などの物性をX線CTにより収集し、腐食層の影響を取り入れた腐食モデルを確立する。本研究の成果により、従来、経験による推測の域を出なかった古墳副葬品の現地保存の可否の判断を、科学的なデータに基づいて推定することが可能になる。 初年度となる令和3年度は模擬古墳を用いた腐食実験のモデル化の前段階として、1)石室内の床面土中での腐食を模した室内実験の結果をモデル化し、数値解析による再現を試みるとともに、2)古墳出土の鉄製文化財の腐食層の解析を実施した。1)の数値解析では水分飽和状態から乾燥過程に移行するカラム内の土壌の、熱・水分、気相酸素・溶存酸素の挙動と、土中に設置した炭素鋼の腐食速度、腐食電位、さらに腐食によって溶出した鉄イオンを数値解析によって再現した。なお、数値解析の妥当性については、環境側については溶存酸素の実測値、腐食反応については腐食速度の実測値と比較することで、検証した。その結果、土中の水分状態が飽和状態から乾燥過程に移行するまでの変化については、腐食速度の変化を十分に再現することができた。一方で、乾燥過程における腐食速度の変化については、充分に再現されておらず、さらに改善を進めている。2)の出土鉄製文化財の腐食層の解析ではマイクロフォーカスX線CTの撮像を行うとともに、得られた結果の画像解析を行うことで、腐食層の密度分布に加えて、空隙径の分布、比表面積などを計測した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和3年度は1)室内実験結果の数値解析による再現、および2)出土鉄製文化財の腐食層の組成、構造の解析を予定していた。1)については、土中での水分状態が変化した際の腐食の挙動をおおむね数値解析による再現ができており、模擬石室内での実験結果のモデル化に着手する用意が整いつつある。一方、2)については、マイクロフォーカスX線CTでの解析は実施したものの、当初予定していたガス吸着法は受託分析会社のスケジュールの関係上実施できなかった。これについては早急に実施するために、調整を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は以下の3点を中心に研究を進める。 1)室内実験の数値解析の精度の向上:令和3年度に引き続き、室内実験結果を数値解析により再現する。特に、土壌の乾燥過程に移行した際の腐食速度の上昇の挙動をより精度良く再現できるように検討する。具体的には、さび層の還元反応の考慮、濡れ面積の算出法について、検討する。 2)数値解析による模擬古墳での実験結果の再現:模擬古墳で得られている腐食センサから算出された腐食速度を石室内空間での腐食、および床面土中の腐食に分けて、それぞれの数値解析による再現に着手する。 3)腐食層の組成、構造解析:出土鉄製遺物の腐食層および模擬古墳の実験試料の腐食層に対して、次の3つの分析をおこなう。①マイクロフォーカスX線CTによる微細構造の観察、②X線回折法による腐食層中のα-FeOOH、γ-FeOOHの定量分析③ガス吸着法により比表面積、細孔径の分析、である。
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Causes of Carryover |
当初予定していた腐食層のガス吸着分析が実施できなかったためである。これについては令和4年に実施する予定である。
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Research Products
(1 results)