2021 Fiscal Year Research-status Report
人文資料形成史における博物館学的研究 - 根岸有山・武香旧蔵資料の研究と公開
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21K01002
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Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
内川 隆志 國學院大學, 文学部, 教授 (80176677)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三浦 泰之 北海道博物館, 研究部, 学芸主幹 (50300843)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 根岸友山 / 根岸武香 / 『榧園好古図譜』 / 集古舎 / 3D撮影 / 重圏文鏡 / 「アイヌ舞踊の図」 / 松浦武四郎 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画調書に記した研究目的に記したように、本年度前半は文献調査を基本とした研究を実施し、特に根岸武香が自身のコレクションを記録した『榧園好古図譜』4冊(エントリーシートでは『根岸家蒐蔵好古資料図譜』(仮称)4冊とした。)の解析等を実施し、9月4日・5日には、根岸家所蔵資料の悉皆調査(埴輪関係・縄文遺物関係・古墳時代遺物関係・工芸品関係・外国資料・文書・書籍関係・その他関連資料)を実施し、多くの新知見を得ることができた。現地調査後國學院大學において実施した縄文土器11点については、全て3D撮影を実施した。3D化の方法としては写真1枚1枚が重なり合う範囲を考慮しながら、資料を横方向10度づつ回転させつつ、天地方向に視点を移動させることを繰り返して写真撮影を実施し、250~500枚の写真データをMetashape Professionalにインポートし、点群を生成。その他ポリゴンモデル生成に関する処理を行うことで3Dモデルを作成した。報告については2022年度に実施する予定である。さらに、根岸武香が古物コレクションを公開していた施設である「集古舎」が根岸邸内に残されており、この遺構を記録すべく詳細な測量を実施し、往時の状況を記録し報告した。考古遺物の調査については、各地に分散して収蔵されている埴輪関係の整理を行い、概ね現状を把握することができた。さらに「冑山村字雷船木山下」出土品である重圏文鏡ならびに石製模造品と和鏡群についての調査研究を実施し、その詳細について報告している。また、9月4日の調査では、松浦武四郎が根岸武香の為に描いたアイヌ舞踊である「鶴の舞」を画題とした傑作を発見し、美術史的観点から報告している。研究成果は、内川隆志編 2021 『人文資料形成史における博物館学的研究 根岸友山・武香旧蔵資料の研究と公開 Ⅰ』にまとめ、WEB上〈好古家と近代博物館の形成〉でも公開している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画調書の研究目的に示した① 根岸家所蔵資料の調査(埴輪関係・縄文遺物関係・古墳時代遺物関係・工芸品関係・外国資料。文書・書籍関係・その他関連資料)並びに目録作成、写真撮影、実測図作成を実施し、詳細な資料評価を含む報告書の刊行。に関して、埴輪関係・縄文遺物関係・古墳時代遺物関係・工芸品関係資料の主だったものについて、予想以上の成果を出すことができた。特に、根岸邸内においてコレクションを公開していた「集古舎」について、これまでにない詳細な研究ができた点について、埼玉県博物館史に一石を投じるものである。(新井端「根岸邸の古器物陳列場について」)具体的な資料調査に関しても 「冑山村字雷船木山下」出土品である重圏文鏡(徳田誠志 「根岸武香旧蔵の重圏文鏡について」と和鏡群(内川隆志 「『榧園好古図譜』に所載された和鏡について」)についての研究成果を出している。また、新発見の松浦武四郎画についても美術史的な評価を実施した。(五十嵐聡美 「根岸武香旧蔵松浦武四郎画「アイヌ舞踊の図」について」)上記所載文献は、内川隆志編2021『人文資料形成史における博物館学的研究 根岸友山・武香旧蔵資料の研究と公開 Ⅰ』) 書籍関係では『榧園好古図譜』4冊は、すべてのスキャニングを終了し、個々の内容について関連する資料を悉皆的に調査を行っている。文書調査に関しては新型コロナ流行により分担研究者の行動範囲が限られ、思うように進捗していない。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画調書に示した①の継続研究の実施。特に2022年度は根岸武香と交流のあったハインリッヒシーボルト等についても焦点をあて、根岸武香も蒐集の眼目に据えた古銭の研究を加える予定である。具体的には、武香を含む当時の古銭蒐集における好古家ネットワークの実態を捉え、平成29(2017)年に科学研究費補助金基盤研究B「好古家ネットワークの形成と近代博物館創設に関する学際的研究」(研究代表内川隆志 課題番号17H02025)において調査したドイツイェーナ大学所蔵のH.v.シーボルトが同大学に寄贈した日本の貨幣コレクション約1000点の調査成果を合わせて報告する予定である。さらに今年度は、2021年度に調査した縄文土器11点に関して3Dデータをもとにした研究報告等を予定している。武香が蒐集した埼玉県熊谷市中条出土の埴輪群に関しては、榧園好古図譜』所載資料を基本にした昨年度の研究によって既にその帰属先等が判明しており、状況に応じて資料化を推進する予定である。根岸家の資料調査は本年度も継続し、蔵内の資料群の中で友山、武香関連資料の発見に務め、随時学術的観点から調査研究を実施する予定である。昨年度の調査では既にある程度整理された状態で巻子類がまとまっていることから、当該分野の専門家による調査を依頼しその実態を明らかにする。② 根岸有山、武香関連文献調査(国会図書館胄山文庫、埼玉県立文書館、愛知県西尾市岩瀬文庫他)の実施等関しては、分担研究者の三浦泰之と共に状況をみながら鋭意悉皆的に実施する予定である。③ 根岸有山・武香旧蔵資料の悉皆調査(関西大学・静嘉堂文庫他)に関しては、関係機関と協議の上調査を推進する予定である。
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Causes of Carryover |
年度ごとに研究成果を講評すべく印刷経費を執行したためその他の支出が多くなっている。今年度も同様に研究報告書を刊行する予定である。
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Research Products
(5 results)