2021 Fiscal Year Research-status Report
江戸時代における貝類利用の俯瞰的研究-食用から美術工芸までを視野に入れて-
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21K01007
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Research Institution | Natural History Museum and Institute, Chiba |
Principal Investigator |
黒住 耐二 千葉県立中央博物館, その他部局等, 研究員(移行) (80250140)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 近世貝塚 / 伊藤若冲 / 貝甲図 / 魚譜 / タニシ / マツカサガイ / 干潟 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、コロナ禍のため日本各地での現地調査や文献調査を予定通りに進展させることができなかった。その中において、主に4つの事例を検討した。1)京都市で確認された中世末~近世および近世の淡水貝類の貝塚資料を詳細に分析し、報文化した。これらの貝類はタニシ類とイシガイ類であり、自家消費ではなく、他集団に供給(”販売”)していることを明確にした。併せて、遺跡の堆積環境を復元した。2)明治時代初頭の鉄道関連遺跡として、新たに国指定史跡になった東京都港区の高輪築堤遺跡で、築堤前後の堆積物を採取させて頂き、現在、処理・分析中である。築堤当時の干潟及び周辺環境、築堤直前の近世期の廃棄、築堤建設中の廃棄と異なった由来の貝類を抽出することができ、泥底の干潟の存在や、江戸時代の一般的な貝類利用・廃棄、選択的な建設中の貝類利用を区分して明らかにできつつある。また、築堤造成土からもわずかに貝類遺体が得られ、近郊の土地利用も推測することができた。3)鹿児島の近世末の魚類図鑑を検討し、貝類に関しては極めて浅いところに生息する種のみしか得られていないことを明確にできた、4)伊藤若冲の「貝甲図」に示されている貝類100点以上の同定を行い、およそ終了することができた。これまでに指摘されてきた琉球等に生息する種は極めて少なく、ほとんどは和歌山=紀伊で採集されたものだろうと推測された。 葛飾北斎等の浮世絵も検討を進めているが、貝が題材とされている例はごく稀であり、ターゲットにはなっていないと判断できる。螺鈿・貝細工等での利用に関しても、包括的な記述しか確認できておらず、2次・3次資料も一般的にみることのできる文献にもあたれていない。逆に考えると、研究対象となっていないと理解できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
最も大きな要因は、コロナ禍による出張規制である。各地の遺跡等の現地調査・博物館・図書館等での文献調査が進展していないということによる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の2年目である今年度は、コロナ禍も収まりつつあり、文献だけではなく各地での現地調査と文献調査を精力的に進める予定である。年度当初に、東中国海での漁業の中心地である長崎での調査を実施することができた。しかし、近世期の螺鈿細工の中心地と 捉えられているにも関わらず、やはり良い文献にあたることはできなかった。 今後は、より広範囲に日本各地を回り、特に北海道と沖縄をメインターゲットとして調査を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
進捗状況で述べたように、コロナ禍で北海道や沖縄等の遠距離を中心とした現地調査が実施できなかったため、大幅に次年度使用額が生じてしまった。 そのため、次年度には松前藩からの俵物三品として著名なアワビ(エゾアワビ)に関する調査および近世期のアイヌにもたらされた沖縄の貝を利用した根付等を調査しに北海道へ、および螺鈿素材としてのヤコウガイのヤマト(≒本土)向けおよび琉球内部での利用を確認するために沖縄へ長期の調査を計画している。 併せて、未調査で良好な文献資料をも見ることができていない東北や四国・九州へ博物館・図書館での該当資料群の確認および漁港や遺跡での現地確認を行う。
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Remarks |
令和3年10月15日 沖縄県立博物館・美術館「海とジュゴンと貝塚人」テープカット 鹿児島県「伊仙町誌」先史・原史時代部会委員;NHK沖縄/沖縄タイムス/琉球新報/朝日新聞/読売KODOMO新聞の貝類関係取材対応・掲載
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Research Products
(3 results)