2022 Fiscal Year Research-status Report
Corresponding to general history exhibition considering the background of the establishment of the regional biota: Toward the renewal of the regional museum
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21K01011
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Research Institution | The Yokosuka City Museum |
Principal Investigator |
内舩 俊樹 横須賀市自然・人文博物館, その他部局等, 学芸員 (20463086)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 博物館 / 地域生物相 / 三浦半島 / 身近な生物 / 昆虫 / 植物 |
Outline of Annual Research Achievements |
報告者の所属博物館がフィールドとする神奈川県南東部の三浦半島の地域生物相の成立背景を明らかにするため、地域生物相成立史に関連づけた4つの地域(①鹿児島県奄美大島[夏期]、②東京都伊豆諸島[夏・秋・冬期]、③茨城県東茨城郡南部[夏期]、④東京都多摩丘陵地域[夏期])にて、“身近な生物” を選定するための生物相調査を行った。また、②に関連して②’静岡県伊豆半島南西岸地域[夏・冬期]を、④に関連して④’神奈川県横浜市多摩丘陵地域[夏期]および東京都檜原村[夏期]の調査も、それぞれ行った。 前述した4地域の調査に際しては、前年度購入の高解像度撮影装置に当年度購入の高精細近接レンズもしくは高精細望遠レンズを組み合わせることにより、①では237種、②では延505種、③では169種、④では123種の動植物について生態写真の画像データを取得した。なお、関連調査地においても、それぞれ数十種の動植物の生態写真の画像データを取得した。 文献ベースでの情報収集については、主に②の地域について追加データを追加し、クモ類など昆虫類以外も加えたリストを作成した。 上記にて示した三浦半島以外の地域についての現地調査や文献調査により、三浦半島との顕著に対比できる地域や昆虫が明らかになってきた。そこで、本研究テーマに関連して、報告者の所属博物館において年度後半に2件の展示を制作した。1件は2023年1月7日から2月19日まで展示したパネル展示「奄美大島昆虫調査2022」、もう1件は2023年1月28日から4月16日まで展示したトピックス展示「新着標本2023」を展示した。また、2022年9月3~5日に開催された日本昆虫学会第82回大会では、本研究の目的や背景について一般講演(口頭発表)を行い*、質疑応答を通じて有益な示唆を得た。 【*内舩俊樹2022 B101“身近な昆虫”を軸とした地域昆虫相の比較. 日本昆虫学会第82回大会講演要旨集, 48.】
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
三浦半島以外の4地域各季節の生物相現地調査については当年度6回の調査を4地域にて遂行した。すなわち、①鹿児島県奄美大島[夏期]、②東京都伊豆諸島[夏・秋・冬期]、③茨城県東茨城郡南部[夏期]、④東京都多摩丘陵地域[夏期]である。これらの現地調査にあたり、計画通り購入した高精細近接レンズもしくは高精細望遠レンズを高解像度撮影装置に組み合わせることにより、延1,034種の動植物について生態写真の画像データを取得した。 上記の調査に加え、三浦半島との比較精度を高めるため、対象4地域に関連した追加地域調査も予備的に実施した。また、植物の同定については前年度に確立したルーティンにより、取得した生態写真の画像データや採集した葉などをもとに調査協力者による同定を行った。 文献ベースでの情報収集については、現地調査における雨天時の文献収集活動として位置付けていたため、Webや所属博物館収蔵図書での収集にとどまった。 報告者の所属博物館における2件の展示について詳述すると、(1) パネル展示「奄美大島昆虫調査2022」では、本研究の趣旨説明に加え当年度の調査地域①で記録された昆虫など動物の中から、三浦半島に近縁種が知られる47種を選定し、展示しており、(2) トピックス展示「新着標本2023」では、当年度の調査地域②で記録された昆虫の中から、食草が分布していることから三浦半島にも近い将来進出すると考えられるハムシ類2種(イチモンジカメノコハムシ、タテスジヒメジンガサハムシ)を展示した。 上記にて示した三浦半島以外の地域についての現地調査および文献調査の進捗については、追加地域調査も含め当初の計画以上の進展と言えた。一方、調査地域②以外について文献調査の遅れと、三浦半島の昆虫相に関して前年度から公表を進めていた調査が遅れたことの2点から、総合的な進捗は計画通りの判定とした。
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Strategy for Future Research Activity |
三浦半島以外4地域の生物相現地調査については、研究期間内の遂行を目指して計画通りに実施する予定である。一方で、これら4地域と三浦半島とを比較する際に、比較精度を高める(各地域の動植物の中から三浦半島の動植物相からは極端にかけ離れた要素や各地域の固有要素を排除するなど)ため、4地域にそれぞれ関連する追加地域調査(①奄美大島に対する沖縄本島、②伊豆諸島に対する伊豆半島や小笠原諸島、③東茨城郡南部に対する福島県浜通り南部、④多摩丘陵地域に対する奥多摩地域)を想定し、精度の高い比較に向けたデータ収集を行うつもりである(うち②と④に関する2地域については当年度に予備調査を実施)。 植物については、高解像度画像入力装置を中心とした採集植物体のスキャンデータ収集装置により、展示として利用可能な高精細植物画像の取得を進めたい。 文献ベースでの情報収集については、できるだけ現地調査より速いペースで進め、調査対象4地域ごとに全体像が把握できるようリスト化し、現地調査における確認および同定ならびに “身近な生物” 選定を効率的に進められるようにする。 前項〈現在までの進捗状況〉でも記したとおり、前年度から見直しを行っている2013年度から2020年度までの三浦半島の横須賀市内19カ所の昆虫調査記録について、“身近な昆虫” の候補になり得る種のリストアップを行い、地域間比較において三浦半島の生物相側でも精度を高めておきたい。
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Causes of Carryover |
物品費においては、当初想定額との差額で発生した執行残額を追加調査旅費に回した。人件費・謝金においては、当初想定していた資料同定補助について支出を必要としないルーティンにて運用できたことから、執行残額を旅費の不足額に充当させることとした。その他においては、当初想定していた機器借上げ開始年度を先に伸ばしたことから、執行残額を追加調査に回すこととした。これらの流用先である旅費においては、夏季調査が運賃や宿泊費の高騰から当初想定額を上回った分を充当させたとともに、新たに3件の追加調査を計画し、2件は年度内に執行、残り1件は次年度初めの予約分で執行した。これによる残額を次年度の旅費として年度初めに予定している追加調査において執行する予定である。
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Remarks |
研究成果に関する論文PDFをダウンロード可能
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Research Products
(5 results)