2022 Fiscal Year Research-status Report
日向灘沿岸低地における完新世の古津波・古環境の復元に関する研究
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21K01017
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
大平 明夫 宮崎大学, 教育学部, 教授 (00262824)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 完新世 / 沖積低地 / 縄文海進 / 砂州 / 浜堤 / 泥炭地 / 古環境 / 津波堆積物 |
Outline of Annual Research Achievements |
日向灘沿岸に分布する3つの沖積低地(大貫低地、江田川低地、跡江川低地)を調査地域に選択し、現地調査を実施した。大貫低地は延岡平野西部に位置し、大瀬川と五ヶ瀬川に囲まれた丘陵地近辺の低地である。大貫低地では、2地点においてハンドボーリング調査を行い、分析用の地質試料(砂泥質堆積物とその上位の泥炭質堆積物)を採取した。宮崎平野の海岸部に位置する江田川低地では、2地点においてハンドボーリング調査を行い、分析用の地質試料(植物片を含む砂泥質堆積物)を採取した。宮崎平野の内陸部に位置する跡江川低地では、3地点においてハンドボーリング調査を行い、うち2地点で分析用の地質試料(鬼界アカホヤ火山灰の最上部とその上位の泥炭質堆積物)を採取した。上記の地質調査で採取した堆積物を詳細に観察し、層相変化を記録した。採取した堆積物の年代を明らかにするため、計12点の加速器質量分析法(AMS)による放射性炭素(14C)年代測定を分析機関に依頼して実施した。 延岡平野西部の大貫低地の砂泥質堆積物の最下部(深度約5mまで掘削)は約6000~5900年前の年代値を示し、その上位の泥炭質堆積物は約4400~3400年前の年代値を示した。このことから大貫低地の堆積物は、縄文海進最盛期以降の古環境変動を記録している可能性が考えられた。 宮崎平野の江田川低地の砂泥質堆積物(深度4.4~1.7m)に含まれる3点の植物片は、全て約1700~1600年前の年代値を示した。このことから江田川低地の東側(海側)の砂州・浜堤の形成時期は約1700~1600年前以前であることが推定された。 宮崎平野の跡江川低地の泥炭質堆積物基底部の14C年代が約7200~6900年前を示した。約7300年前のK-Ah(鬼界アカホヤ火山灰)降下から約100~400年後には、低地が湿原(泥炭地)化したことが推定され、前年度の研究成果と調和的であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
宮崎県内の3つの沖積低地(延岡平野大貫低地、宮崎平野江田川低地・跡江川低地)を調査地域に選択し、現地調査を実施した。学生雇用を調査補助として、計7地点でハンドボーリング調査を実施して、分析試料を採取することができた。堆積物に含まれていた泥炭・植物片を試料として、計12件の放射性炭素年代測定を分析機関に依頼し、年代測定値を得ることができた。宮崎平野の跡江川低地で採取した堆積物を試料として、珪藻分析を実施した。放射性炭素年代測定と珪藻分析の結果、約7300年前の鬼界アカホヤ火山灰の堆積後の古環境(アカホヤ噴火の約150~300年後、跡江川低地は静穏な湿原の環境であったこと)が明らかとなった。一方、宮崎平野海岸部の江田川低地では、東側(海側)の砂州・浜堤の形成時期は約1700~1600年前以前であることが推定された。 上記のように、日向灘沿岸低地の完新世の古環境の復元が進みつつある。しかし一方で、完新世の古津波を示す、明確な地質学的証拠(津波堆積物)の発見に至ってはいない。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は過去2年間で採取した堆積物の珪藻化石分析を行い、詳細な堆積環境の変化を明らかにしていく。放射性炭素年代測定値と珪藻化石分析の結果から、日向灘沿岸低地の完新世における古環境を明らかにしていく。また、これまでの調査対象地域において、ハンドボーリング調査地点を増やし、津波堆積物の探索を継続していく。
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Causes of Carryover |
ハンドボーリングで採取した堆積物から、計画していた数量の放射性炭素年代測定用の試料数を得ることができなかった。そのため、次年度の研究費として持ち越すことにした。
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