2023 Fiscal Year Research-status Report
The conservation and reasonable uses of agri-rural spaces with the nesting system in metropolitan areas
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21K01031
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
菊地 俊夫 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 客員教授 (50169827)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | コミュニティガーデン / 近郊内帯 / 近郊外帯 / 地域コミュニティ / 余暇空間 / 包摂構造 / 「農」空間 / 社会性 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究ではコミュニティガーデンが近郊内帯から近郊外帯に立地移動する傾向にあることと、近郊内帯のコミュニティガーデンが社会的な意味(社会性)をもつことで存在意義を高めていることを明らかにした。具体的には、近郊の内帯と外帯におけるコミュニティガーデンの地域的な性格の違いを国内外の事例研究から明らかにした。近郊内帯のコミュニティガーデンは、ニュージーランドのネルソン都市圏の調査からも明らかなように、地域コミュニティの維持と地域住民の食育という社会的な意味(社会性)をもって存在していた。実際、ネルソン都市圏の近郊内帯では都市化の影響で地域コミュニティの結びつきが希薄になり、地区の美化活動やボランティア事業などの社会活動に支障をきたしていた。そのような課題を解決する事業の1つとしてコミュニティガーデンが導入され、作物の栽培や収穫を通じた作業は新住民と旧住民を結びつけるようになった。また、有機農業で栽培する作物は安全安心であり、環境負荷を与えないものとして地域住民の子どもの食育や環境学習にもつながった。それに対して、近郊外帯のコミュニティガーデンは、オランダとベルギーや日本における事例地域の調査で明らかにされたように、地域住民の余暇空間としての性格を強くしていた。そのため、近郊外帯のコミュニティガーデンの参加者は特定の地域コミュニティに集約されることはなく、さまざまな地域コミュニティに分散して属していた。つまり、近郊内帯のコミュニティガーデンは地縁的組織の性格をもつのに対して、近郊外帯のコミュニティガーデンは機能的組織として性格づけできる。これら2つのタイプのコミュニティガーデンはそれぞれ独立した存在形態で、外帯の形態から内帯の形態に進化するものなのか、それともそれぞれが役割分担して、関連しながら包摂構造を形成して都市圏の「農」空間を保全しているのかは最終年度の課題となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナの影響もほとんどなり、国内外の調査が概ね順調に行われるようになった。そのため、研究は順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
コミュニティガーデンをノード(結節点)として都市と農村が共生する包摂構造の仮説モデルを実証研究に基づいて検証することが最終的な研究目標である。そのためには、国内外の多くの事例地域でフィールドワークを行い、都市と農村の共生が判別できる質的データと量的データを収集することが第一の研究の方向性となる。第二の方向性は、コミュニティガーデンの包摂構造に関する実証研究をまとめて、都市-農村の共生関係に関する包摂構造の一般化を試みることである。そして、第三の方向性は、コミュニティガーデンの包摂構造に関する都市農村の共生に関する研究を国内外の会議で成果として報告し、国内外の研究者との議論を行うことでさらに精緻化することである。
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Causes of Carryover |
研究成果はヨーロッパ農村地理学会で発表された。最終年度においては、国際地理学会(IGC)がアイルランドのダブリンで開催されるため、そこで研究成果を発表し、国外の研究者と議論を深める予定であるため。
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