2022 Fiscal Year Research-status Report
パンデミック後の世界都市における都市再生の動向に関する地理学的研究
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21K01032
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
藤塚 吉浩 大阪公立大学, 大学院経営学研究科, 教授 (70274347)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ジェントリフィケーション / コマーシャルジェントリフィケーション / ツーリズムジェントリフィケーション / インナーシティ問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、ロンドン東部スピトルフィールズにおける現地調査を行い、主に次の三点の研究成果を得た。第一に、スピトルフィールズの失業率は1991年の33.1%から2021年の8.1%に低下し、1991年に多くあった空き家は、歴史的な保存建築物に指定されて修復されたものもあり、富裕層がその家屋を購入して移り住んできたことを示した。第二に、スピトルフィールズにおいて、2011年から2021年までの就業者の職業別変化をみると、ブルーカラーの生産工程就業者が減少し、ホワイトカラーのうち専門職と技術職の就業者は減少したが、管理職の就業者は増加し、ジェントリフィケーションが変化してきたことを明らかにした。同期間の居住者のエスニシティの変化については、バングラデシュ系住民も増加しているが、白人の英国人は減少する一方で、多国籍の住民が増加したことを示した。その影響もあり、ブリックレーンとその周辺の2017年の住宅価格は、ロンドン東部で最も高くなった。第三に、旧スピトルフィールズ市場の建物が改装され、衣料品や土産物、各種料理の屋台が並ぶとともに、旧トルーマン醸造所のところでは週末にビンテージファッションの販売やエスニック料理が提供され、若年層に人気があり、多くの観光客が訪れる一方で、地域住民のためのスーパーマーケットが閉鎖されて、チェーンホテルが建設されたことを明らかにした。 また、東京都中央区に立地する印刷業の工場についての調査と分析を行い、零細工場の多くが閉鎖となり、空き地や空き家を再開発した超高層共同住宅が建設されたことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ロンドン東部における現地調査を行った研究成果については、経済地理学会関西支部12月例会にて報告するとともに、『都市地理学』18号に「ロンドン東部スピトルフィールズにおけるジェントリフィケーション」として掲載された。また、東京における研究に関しては、統計資料による調査・分析を行い、都市変化の動向の把握を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、2020年の国勢調査の結果を利用して、東京都心周辺部および東京の郊外において、都市再生の現地調査を行う。2021年のセンサスを用いて、ロンドン東部におけるインナーシティの変化について分析を行う。また、2020年のセンサスを用いて、ニューヨーク市における都市再生動向についての分析を行う。調査研究の成果については、日本地理学会の秋季学術大会において報告する計画である。
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Causes of Carryover |
2022年度に実施したロンドンの現地調査では、燃油代の高騰と円安により、調査費用が非常に高くなっていた。予算残額を有効に活用して海外調査を実施するために、翌2023年度に残額を繰り越すこととなった。これにより2023年度には、海外調査を含めた現地調査を遂行できる計画である。
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