2022 Fiscal Year Research-status Report
Local Contexts, Lifecourse Trajectories, and Migration of Middle-Aged and Older Adults
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21K01040
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Research Institution | National Institute of Population and Social Security Research |
Principal Investigator |
中川 雅貴 国立社会保障・人口問題研究所, 国際関係部, 第3室長 (80571736)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山内 昌和 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (90415828)
千年 よしみ 国立社会保障・人口問題研究所, 国際関係部, 第1室長 (00344242)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 人口移動 / マルチレベル分析 / ライフコース / 文脈効果 / 構成効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、子どもや親(老親)をはじめとする家族に関連する要因に影響を受けやすい中高年期の移動や居住地選択について、地域の特性およびその変化と個人のライフコースの相互関係を考慮した新たな検討を加えることを目的とするものである。初年度は、中高年期の家族関係や世代間支援関係に関連すると考えられる地域特性・地域環境指標(コンテキストデータ)の抽出および検討を行った。これを踏まえて、2年目は居住地移動に関するミクロデータとの結合による階層的データの整備と分析を進めた。 また、方法論的検討を含む関連テーマについての研究成果を発表するとともに、本研究で用いる分析のフレームワークの構築および分析モデルの精査を進めた。具体的には、人口移動研究における従来の方法論課題の一つであるミクロのアプローチとマクロのアプローチの分断に関する問題意識に基づき、マルチレベル・モデルを適用したアプローチが有効と考えられる概念的・方法論的背景を示した研究を学会で報告し、その成果を学会誌に投稿した(2023年9月刊行予定。) 加えて、日本国内の人口移動に関する全国標本データを用いて、地域(マクロ)レベルと家族(ミクロ)レベルそれぞれで測定される介護資源の多寡が、高齢期における居住地移動に与える効果をマルチレベル分析により検証し、その結果を国際学会で発表した。ここでは、近年の国際的な研究動向において新たな潮流の一つとなっている「家族」を単位とする分析アプローチが、世界に先駆けて少子・高齢化が進む日本国内の人口移動およびその要因を分析する上でも有用なアプローチになりうることを示した。これにより、国際的な研究ネットワークを広げるという点でも、意義のある成果となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実施計画に沿って、初年度は高齢者ケアや保育に関連する施設やサービスの整備・充足状況といった中高年期の家族関係・世代間支援関係に影響を与えると考えられる地域特性・地域環境指標(コンテキストデータ)の検討・抽出を行った。また、2年目以降の分析計画の準備作業として、政府統計調査による調査票情報(個票データ)の二次利用申請を行い、利用承諾を得た。 2年目は、上記の作業により作成したコンテキストデータとミクロデータと結合した階層的データの分析を進めるとともに、その分析結果(中間結果)を国際学会等で発表した。加えて、方法論的検討を含む関連テーマについての研究成果を発表するとともに、それらを踏まえて、本研究で用いる分析のフレームワークの構築および分析モデルの精査を進めた。なお、2年目の成果については、「人口移動調査」によるデータを用いた分析およびその結果の発表を優先したため、1年目に利用承諾を得た「中高年者縦断調査」を用いた分析については、やや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目までに得られた分析結果を論文として取りまとめ、学術誌に投稿する。また、当初の予定よりも遅れている「中高年者縦断調査」を用いた分析を進め、パネルデータを活用した中高年期における転居の発生傾向の地域差およびその要因に関する分析を進める。具体的には、中高年者縦断調査により把握できる転居の発生タイミングに関する情報を用いて、転居による世帯構成(居住形態)および家族間の支援関係の変化について分析したうえで、その地域的差異に関する検証を行う。この分析結果についても、最終年度に内外の学会で報告するとともに、学術誌への投稿論文等として取りまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
2年目に予定していた国際学会参加のための渡航を見送り、オンライン参加とした。また、データベースの整備について、研究補助員(リサーチアシスタント)を雇い入れて作業を進める予定であったが、作業工程を見直すことにより効率化を高めることができ、当初の予算よりも人件費が抑制された。人件費については最終年度の使用予定額を増加することとした。
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