2021 Fiscal Year Research-status Report
1970年代の草の根環境運動に関する存在論的研究-金武湾闘争と豊前火電反対運動
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21K01042
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
中島 弘二 金沢大学, 人間科学系, 教授 (90217703)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 身体 / 物質性 / 反CTS運動 / 豊前火力発電所建設反対運動 / 環境運動 / 草の根市民運動 / 存在論的展開 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度はコロナ禍のため当初予定していた沖縄での金武湾反CTS闘争に関する資料収集および関係者への聞き取り調査をおこなうことができなかったが、2年目に購入を予定していた豊前火力発電所反対運動の機関紙「草の根通信」の復刻本を1年前倒しして購入し、関連書籍と合わせて豊前火電反対運動の実態を解明するとともに運動の過程における自然と身体との関係についての存在論的な検討をおこなった。また、ごく短期間ではあるが10月に大分県を訪問し、市民運動関係者への聞き取りをおこなった。また、主に英語圏における身体と物質性に関する文化地理学および批判地理学の文献サーベイをおこない、研究枠組みの理論的な精緻化をはかった。 本研究に関連する研究成果としては、2021年度人文地理学会大会(2021年11月21日、オンライン開催)において場所をめぐる身体と物質性に関する「被災地の復興をめぐる場所の喪失と再構築-瀬尾夏美「二重のまち」を読む-」を発表し、その後に雑誌「空間・社会・地理思想」25号(2022年3月発行)に同題名の論文を寄稿した。また、2022年1月にRoutledge社から出版されたBerg, L., Best, U. and Larsen, H. G.編による "Placing Critical Geographies: Historical Geographies of Critical Geography" に、中島弘二・福田珠己・原口剛の共著により"Chapter 6. Critical Geographies in Japan: A Diverse History of Critical Inquiry"を寄稿した。これは日本における批判地理学の理論的な展開を展望したものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度はコロナ禍のため沖縄での現地調査をおこなうことができなかったが、当初の計画を入れ替えて2年目に予定していた大分の市民運動に関する資料の分析と調査を前倒ししておこなうことができたので、全体としては大きな遅れはなかった。具体的には「豊前火力絶対阻止・環境権訴訟をすすめる会」(後に「草の根の会」に改称)の機関紙「草の根通信」(1972-2004)の復刻本全巻を購入できたことで、豊前火電建設反対運動の研究に不可欠な基礎的資料を入手することができた。また、英語圏の関連研究の文献サーベイをおこなうことで、研究枠組みの理論的な精緻化を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、2021年度に入手した「草の根通信」の分析を進めるとともに、昨年度に実現できなかった沖縄での調査をおこなう。具体的には、反CTS闘争の主体となった「金武湾を守る会」の機関紙「東海岸」の分析をおこなうことで、金武湾反CTS闘争の実態と金武湾をめぐる地域住民とローカルな自然との結びつきを明らかにすることを試みる。また、当時の運動関係者への聞き取り調査をおこなうことで、当時の運動関係者間のネットワークを明らかにし、1970年代の環境運動・市民運動間の思想的・社会的なつながりを解明することを試みる。
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Causes of Carryover |
上述のようにコロナ禍のため2021年度に予定していた沖縄での現地調査を行うことができなかったために、その分の調査旅費を執行することができなかったことが原因である。この分は、翌年度分として請求した助成金と合わせて、2022年度中に実施予定の沖縄での金武湾反CTS闘争に関する現地調査と大分での豊前火力発電所建設反対運動に関する現地調査、および国立国会図書館(東京都)での資料収集などの旅費に当てるとともに、2022年12月に台湾で開催予定の東アジアオルタナティブ地理学会議(現時点では対面開催を予定)での研究発表の参加費および旅費にあてる予定である。また、そのほか文化地理学および批判地理学関連の書籍の購入を予定している。
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