2022 Fiscal Year Research-status Report
コンテナ化と都市変容に関する比較研究―ロジスティクス概念を中心として
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21K01045
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
原口 剛 神戸大学, 人文学研究科, 准教授 (40464599)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ロジスティクス / コンテナ化 / 港湾労働者 / 都市下層労働者 / 批判地理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ロジスティクス概念を把握するとともに、日本の都市における研究可能性を模索する。具体的には、第一に、神戸港を中心的な研究対象とし、かつ沖縄の那覇港や北九州の門司港を対象とした事例研究を通じて、コンテナ化の進展過程や、それに伴う空間編成や労働変容の過程を明らかにする。第二に、労働者や生活者による対抗的な空間(カウンター・ロジスティクス)の構築過程とその意義を明らかにする。具体的には、コンテナ化に対抗すべく展開した港湾労働運動、1970年代以降に寄せ場地域で展開した日雇労働運動、現代の野宿者運動などを取り上げ、それらが有する空間論的意義を捉え返す。第三に、ジェントリフィケーションやウォーターフロントに対する批判的研究、人工島開発をめぐる議論、監視社会論や都市統治論など、関連する議論を幅広くレビューし、ロジスティクス概念を基盤とした都市インフラ論の理論的知見を提示する。 以上の研究目的に向け、本年度は、①カウンター・ロジスティクスとしての労働史調査および②ジェントリフィケーションに関する批判的研究について、集中的に調査研究を遂行した。具体的には、港湾運送業を含む寄せ場労働に従事し、労働運動を担った当事者へのインタビューを遂行した。また、ニール・スミスのジェントリフィケーション論を再検討することにより、現代都市における排除の機制についての理論的考察を行った。 ただし、COVID-19の感染拡大により移動が大幅に制限されたことから、那覇港や門司港などの研究対象地への調査を実施することはできず、大阪・神戸・広島を対象とした調査に集中せざるを得なかった。次年度以降は、これらの調査から得られた知見を踏まえ、調査対象地を広げることが求められる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
COVID-19の感染拡大により移動が大幅に制限されたことから、那覇港や門司港などの研究対象地への調査を実施することはできなかった。ただし、大阪・神戸・広島を対象とした労働史の調査研究については、昨年度に引き続き精力的に取り組んだ。これらの調査研究については、当初の計画していた以上に進捗し、新たな資料を発見するなどの成果を上げることができた。その一部は、刊行物やウェブサイト上の情報として逐次公開している。 さらに、本研究の課題のひとつである批判地理学の理論的研究については、ニール・スミスによる「ジェントリフィケーション」の議論について再検討し、寄せ場地域の労働運動から生み出された「流動的下層労働者」概念の地理学的意義を明らかにするなどの作業を行い、本研究にとって重要な理論的知見を導き出すことができた。 、
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までは、COVID-19の感染拡大により移動が大幅に制限されたことから、那覇港や門司港などの研究対象地への調査を実施することはできなかった。そのかわりに、大阪・神戸・広島を対象とした調査や理論的研究を精力的に行ない、これらの課題については当初の計画以上の成果を挙げることができた。 今後は、これらの調査研究を踏まえて調査対象地を広げることで、これまでの研究から得られた知見を比較研究の視座から精査し、普遍的な議論へと展開することが求められる。具体的な研究対象地は沖縄の那覇港および北九州の門司港であるが、本年度においてはとくに那覇港を対象とした調査研究を重点的に遂行する。
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Causes of Carryover |
COVID-19の感染拡大により移動が大幅に制限されたことから、本年度は当初予定していた調査研究の作業を計画どおり遂行することはできなかった。具体的には、神戸港や寄せ場地域については一定程度の資料収集を実施することができたものの、那覇港や門司港などへの調査は実施することができなかった。これらの研究課題については、研究計画に大幅な遅延が生じ、多くの作業を次年度以降に繰り越さざるをえなかった。 次年度以降は、感染状況が終息しつつあることから、那覇港などの現地調査を最優先して研究を推進していく。これと並行して、神戸港や寄せ場地域については一定程度の資料を収集しており、これらの資料の整理・分析の作業を進める。これらの作業には調査旅費や資料整理の謝金などが必要とされることから、これらに関連する費目を優先的に使用していく。
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