2021 Fiscal Year Research-status Report
人口減少時代の地方都市圏の空間構造の変容過程に関する地理学的研究
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21K01046
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
山神 達也 和歌山大学, 教育学部, 准教授 (00399750)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊池 慶之 島根大学, 学術研究院人文社会科学系, 准教授 (20367014)
西山 弘泰 宇都宮共和大学, シティライフ学部, 講師 (20550982)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 地方都市 / 通勤圏 / 都市圏の空間構造 / デベロッパー / 首都圏資本 / 地方資本 / 住宅地開発 / 低未利用地 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はコロナ禍にあり,共同での現地調査や議論の場を設定できなかったため,各メンバーは個別に分担内容に関する研究を進め,以下の研究実績を得た。 【山神】日常生活圏としての通勤圏が有する意義を検討すべく,通勤流動に関する既存研究を整理するとともに,2015年の近畿地方における通勤流動の空間パターンを検討した。その内容は書籍の一章として刊行される予定である。また,地方都市の郊外住宅地という性格の強い和歌山県岩出市の労働力状態を分析し,労働力の高齢化と女性化を明らかにするとともに,出産・子育て期の女性ではフルタイム就業者が少なく,郊外住宅地に暮らす女性の働きにくさを示す結果を得た(山神2022)。 【菊池】地方都市におけるマンション供給の特徴を,主にデベロッパーによる開発戦略の相違から分析した。この結果,日本におけるマンション供給は,首都圏資本の大手デベロッパーが首都圏を中心に,地方都市にも展開する形で進めてきたものの,2000年以降は地方資本による地方都市でのマンション供給も増加し,地方資本の存在感が高まってきていることが明らかになった。特に,国土縁辺部の地方都市では地元の不動産マーケットに精通した地方資本のデベロッパーが,大手資本と連携しながら,主要なマンション供給者としての役割を担っている(李・菊池2021)。 【西山】地方都市である宇都宮市の歴史や産業,空間構造を紹介する記事を執筆した(西山2021)。また,地方都市における戸建て住宅の供給状況,および中心市街地の空き家や空き地,駐車場といった低未利用地の実態把握を行った。地方都市では自家用車の利用率が高く,人口減少局面でも,郊外における住宅地開発が主流である。中心部ではマンション供給もみられるが,大幅な人口増加には寄与しておらず,むしろマンション周辺の低未利用地化を促進していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍にあり,各メンバーは個別に勤務地での調査・研究に取り組んだ。当初の構想とは異なる形となったが,個別に地方都市圏に関する研究成果が蓄積された点で,おおむね順調に進展していると評価できる。各メンバーの研究の進捗状況は以下の通りである。 【山神】既存の都市圏設定に問題がないかを確認すべく,通勤流動の検討を進めた。また,住民属性(労働力状態)の点から地方都市圏の空間構造を検討した。 【菊池】全国の地方都市における中心市街地の土地利用と産業構造を,国勢調査,建築着工統計,全国マンション市場動向(不動産経済研究所)などの統計データに基づいて整理・分析した。 【西山】新型コロナウイルス感染拡大の影響により,宇都宮市以外での調査を行うことができなかった。一方,住宅販売情報の収集,開発許可データの入手,中心部の土地登記簿の取得,国勢調査の人口分析等,情報収集やデータ分析を中心に作業を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍が落ち着くまで,引き続き各メンバーは分担内容に関する研究を進める。コロナ禍が落ち着き次第,共同で現地調査と議論を行い,地方都市圏の変容に関する共通認識を深め,今後の研究につなげていく。各メンバー及び共同での研究の推進方策は以下の通りである。 【山神】通勤流動の検討結果をもとに全国に渡る都市圏の設定方法を確定する。その後,各地方都市圏の人口変化・人口分布変動を分析する。 【菊池】新型コロナウイルス感染症の影響により実施できなかった,事例調査地域の選定を進め,地方都市における就業状態や土地所有が地方都市圏の空間構造の変容に及ぼす影響を実証的に検討する予定である。 【西山】2022年度は全国のいくつかの地方都市に調査対象を広げる予定である。その中で人口分析,中心市街地の土地利用実態の把握,住宅地開発の現状把握など,現地調査を踏まえながら明らかにしていく。 【共同調査】少子高齢化と中心市街地空洞化が進展する一方,近年ではサテライトオフィスなどの立地が進む和歌山県田辺市・白浜町を対象に現地調査を行い,そこでの知見・疑問点を議論して,地方都市圏の空間構造を検討するさいの基本的視角を共有するとともに,各自の研究の進捗状況について報告・議論を行う。その後も,都市規模や立地の異なる他の地方都市を対象とした共同での現地調査を実施したい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で現地調査を実施できず学生との接触も避けたことから,旅費や人件費を執行できなかったため,次年度使用額が生じた。次年度使用額については,コロナ禍が落ち着き次第,共同での調査を含む現地調査や学会発表などでの旅費,および資料・データ整理のための人件費として使用する予定である。ただし,コロナ禍に落ち着きが生じない場合は,住宅地図や登記簿取得をはじめとする研究資料の購入に充てる。
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Research Products
(3 results)