2022 Fiscal Year Research-status Report
住宅取得の観点からみた中国の人口移動パターンの変容と大都市圏の拡大に関する研究
Project/Area Number |
21K01048
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
阿部 康久 九州大学, 比較社会文化研究院, 准教授 (10362302)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 住宅取得 / 長距離通勤 / 農民工 / 帰還移動 / 大都市 / 中小規模都市 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、中国の大都市において、住宅取得の難しさという背景が人口移動パターンの変容に与えた影響について検討することを目標としている。 本年度は、中国・南京大都市圏における馬鞍山市から南京市中心部への長距離通勤者を対象として、長距離通勤を選択した背景を、通勤者の居住形態等の面から検討した。研究結果として、調査対象者のほとんどが元々馬鞍山出身者か配偶者が馬鞍山出身者であり、本人か親世帯が保有する持ち家に居住していたことが分かった。南京市では2000年代から続く住宅価格の高騰により、南京市内での住宅の確保が難しい状況にあり、調査対象者らは馬鞍山市からの長距離通勤を選択せざるを得ない状況にあった。南京都市圏においては、都心部に高学歴な専門職向けの雇用機会が集中すると同時に住宅価格が高騰している状況下にあり、長距離通勤に対する需要は高まっているとみられるが、現在の通勤インフラの状況では、長距離通勤を行うことができる人は、比較的高い収入が得られ、通勤費用を負担することができる人に限られていることが分かった。 また本年度は、内陸部にある河南省出身の出稼ぎ労働者を対象として、出稼ぎ先地域として沿海部の大都市を指向する人が減少し、省内の中小規模都市にて働く人が増加している背景として、大都市における住宅費等の生活コストの高騰が一因となっている点を検討した。この内容については、次年度以降、学会での口頭発表や雑誌論文執筆を通じて、公表していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルスの影響により、研究代表者が中国に赴いて現地調査をすることができなかったため。ただし、現地調査以外の方法によりデータ収集を行うことで、ある程度の進捗はみられているものの、今後は、遅れを取り戻していく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス終息後も、昨今の国際情勢の影響による日中関係の悪化により、研究代表者自身が中国で現地調査を行うことは、困難である。そのため、知人の中国人研究者ら共同研究者に加えることで、現地調査を代行してもらうなどして、研究を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により研究代表者自身による現地調査を行うことができず、次年度使用額が生じてしまった。次年度以降は、新型コロナウイルスの影響は収まるとみられるものの、国際情勢の影響による日中関係の悪化のため、引き続き中国に渡航しての調査は難しいと考えられる。中国人の共同研究者に調査を代行してもらう等して対応していきたいと考えている。
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