2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K01050
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
杉浦 芳夫 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 客員教授 (00117714)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 北村徳太郎 / 中心地理論 / 国土計画 / 昭和の市町村合併 |
Outline of Annual Research Achievements |
戦前、内務省において公園行政に携わった内務技師の北村徳太郎は、1935年から翌年にかけて海外の都市計画事情視察の目的でドイツへ派遣された。帰国後はドイツ国土計画の第一人者となるも、1943年に内務省を退職した。戦後は、その専門知識を国土復興事業に活かすべく、企画院の仕事と東京都の緑地計画事業に協力した後、東京農業大学と東京大学農学部において都市計画や国土計画を教授することになった。折しも、戦前訪れたドイツのニーダーザクセン州で計画されていた国土計画が、戦後、実施に移されつつあることをドイツ語文献から知った北村は、戦後日本の国土計画にあらためて戦時中にドイツで発展した国土計画論を応用することを考えた。大学の講義の参考にと買い求めたHiberseimerのNew Regional Pattern(1949年刊)に収録されていたChristaller(1933)の中心地の理論的分布図は北村の関心を惹き、北村は直観的に、この図の根底にある中世ドイツの中心地分布秩序を現代の都市配置計画に応用しようとしたのがナチ・ドイツの集落計画論であることを見抜いた。北村はChristaller(1933)自体読んでいないが、戦後日本の国土計画に中心地理論の階層的集落構成を反映させることを考えた。しかし、1950年代の日本ではアメリカのTVA開発に代表される流域単位の天然資源開発計画や、北村も一時期その審議会専門委員を務めた、工業立地拠点開発型の全国総合開発計画(一全総)が国土計画の本流となり、ドイツの国土計画論が顧みられることはなかった。他方、一全総について議論されていたほぼ同じ時期、昭和の市町村合併が実施に移されることになり、北村は合併によって誕生した新都市の都市計画の枠組みの中で、ドイツの国土計画論に見られる階層的な中心集落配置論を活かすことを考えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
北村徳太郎の全論文の精読を終えているので、遅くとも夏休み過ぎには「研究実績の概要」に記した内容に基づく論文を、「緑地計画学者・北村徳太郎における中心地理論の発見」(仮題)という題名で『地理学評論』に投稿できる段階にある。
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Strategy for Future Research Activity |
オランダにおいては、アイセル湖ポルダーの干拓事業のうち、戦時中から建設が開始された北東ポルダーにおける集落配置計画、戦後になって建設が始まる南ポルダー・東ポルダーの中心集落配置計画にはいずれも中心地理論の影響がみられた(杉浦 2006)。これらは地域計画の立案に中心地理論が関係した実例であるが、オランダでは戦後の国土開発計画に中心地理論が応用される可能性があった。それは具体的にどのような局面においてであるかと言うと、効果的な開発の実現を可能とする最適な経済地域を設定する段階においてであった。この課題に協力したのが経済地理学者のHendrik Jacob Keuning(フローニンゲン大学)である。そこで令和4年度は、最適な経済地域区分方法の確立につながっていくKeuningの下記の3編のオランダ語論文を精読して中心地理論の具体的活用のされ方を解明し、彼の研究成果が1959年の国土計画案にどの程度まで反映されたのかについて検討する。 ① Indeeling van Nederland in verkeersgebieden. Tijdschrift voor Economische en Sociale Geografie 32 (1941): 97-106. ② Proeve van een economische hierarchie van de Nederlandse steden. Tijdschrift voor Economische en Sociale Geografie 39 (1948): 566-581. ③ Een typologie van Nederlandse steden. Tijdschrift voor Economische en Sociale Geografie 41 (1950): 187-206.
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