2021 Fiscal Year Research-status Report
anthropological study of the basis of people's violence and national violence from the viewpoint of reflexion
Project/Area Number |
21K01054
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
深澤 秀夫 東京外国語大学, その他部局等, 名誉教授 (10183922)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | マダガスカル地域研究 / 社会人類学 / 民衆暴力 / 成文法と慣習法 / 再帰性 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度には、マダガスカル北西部のマジュンガ地方の都市と農村の双方において、民衆や地域住民が拘束した犯罪被疑者を治安機関へ拘引せずに肉体的制裁を加える<民衆裁判>(fitsaram-bahoaka)と呼ばれる「民衆暴力」に関する事例を、現地において<民衆裁判>の当事者や目撃者に直接質問し、その状況をできるだけ克明に記録すると共に、マダガスカルの最小行政単位である<村>(fokontany)において発生した刑事・民事双方の紛争事例とその際の対処法をインタビューと参与観察に基づいて詳細に記録する事を当初予定していた。 しかしながら、現地におけるコロナウィルス感染状況により渡航ができなかった結果、インターネット上に公開されたマダガスカル現地の新聞等の情報から、「民衆裁判」の事例を収集し、その対象者と実行者、発生場所と状況、発生理由について収集と記録を行った。 牛等の略取、家財や農産物等に対する窃盗、家宅侵入の行為者を住民が現場で検挙した際に発生した事例が依然として「民衆裁判」例の大多数を占めたものの、死傷者を出した重大交通事故において当該車両の運転者が「民衆裁判」の対象となった例も見出された。この事例は、当該現場における民衆の集合的な「感情」や「心理」以上に、それを醸成する「損失の回復可能性」の点からの「民衆裁判」の調査と分析が不可欠であるとの見通しを深めた。 また、メールを通して北西部地方の住民から、hala-botyと呼ばれる「民衆裁判」や刑事罰あるいは村会における損害賠償請求の対象とはならない農産物等の<軽い盗み>について、その内容物及び行為者の属性等についての情報を収集した。このhala-botyの慣習についての事例と情報を蓄積する事により、「損失の回復可能性」の視点から「民衆裁判」を考察する際の外延が決定されるのではないかとの展望を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2021年度は、マダガスカル現地におけるコロナウィルス感染拡大に基づく短期ヴィザ発給の停止と国際航空路線の発着停止措置、日本の外務省によるマダガスカル地域についての感染注意情報がレベル3の「海外渡航の禁止」の発出措置、以上の三点の状況が一年間継続した結果、当初予定していたマダガスカル現地における三カ月間の文献調査及び聞き取り調査の双方が一切実施できなかったため、研究の遂行に大きな支障が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
マダガスカル国に対する感染注意情報が、レベル3からレベル2に引き下げられた時点で、当初予定していたマダガスカル現地における聞き取りに基づく臨地調査および公文書館における文献調査を実施する。 仮に2022年度を通して上記レベルが3のまま維持された場合には、日本で入手できる文献資料及びインターネット資料に基づく調査を引き続き行うが、臨地調査を前提に申請した研究主題であるため、その際には研究の進捗状況に大幅な遅滞が生じざるをえない。
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Causes of Carryover |
コロナウィルス感染拡大に伴う、マダガスカル側の短期ヴィザ発給の停止と国際航空便の離発着の停止、日本側の「感染症危険情報レベル3 渡航禁止」の発出により、2021年度に予定していたマダガスカル現地における文献調査と臨地調査の双方を遂行する事ができなかったため、科研費執行を断念し、2022年度以降の執行に繰り越す事とした。 2022年度も、引き続きマダガスカル現地における三カ月間程度の文献調査と臨地調査を予定しており、その旅費・滞在費に予算の多くを充当する予定である。 しかしながら、コロナウィルス感染により2022年度内にマダガスカル渡航の見通しがたたない場合には、マダガスカル関連の文献資料が所蔵されると共にマダガスカル出身者が多く居住するフランス本国もしくはフランス海外県レユニオンにおける調査により、本課題を遂行する事を検討する。
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