2022 Fiscal Year Research-status Report
オンライン化がもたらす巡礼文化の変容に関する宗教民俗学的研究
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21K01060
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Research Institution | Saitama Prefectural University |
Principal Investigator |
浅川 泰宏 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 准教授 (90513200)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 巡礼 / 聖地 / リモート参拝 / COVID-19 / 開帳 / 聖年 / 杖立 / 弘法大師御誕生1250 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、聖地のリアリティや道中のプロセスを経験的に理解する機会を消滅させる巡礼のオンライン化という現象に注目し、ヴァーチャル化した聖地と、日常世界から遠隔的にアクセスする巡礼者が直結されるという新たな現象を読み解く枠組みを構築することである。具体的には(1)巡礼のオンライン化と向き合う心象の調査、(2)「聖年」関連イベントのオンライン企画の調査、(3)写し巡礼におけるリモート要素の再検討などを通して、巡礼は聖地と巡礼路と巡礼者の不可分の三要素で構成されるという従来の基本的枠組みを学術的な再考を目指す。 2022年度は、上記(2)に関連して、コロナ禍での聖年関連イベントの実施例として、善光寺前立本尊御開帳および最上三十三観音子年連合御開帳の参与観察と、四国霊場における弘法大師御誕生1250年の準備状況を調査した。また比較のために、コロナ禍における平年の事例として秩父三十四観音の参与観察を行った。それぞれコロナ禍での感染対策の実施状況や、リモート・オンラインの活用状況、またオンライン化されない現地やモノへのこだわりなどについての事例収集を行った。 またこれまでの調査データから、四国遍路と観音巡礼の比較研究についての学術発表と論文執筆を行った。ここで注目したのが、巡礼者が携行する杖を参拝時に預ける「杖立」である。現在の四国遍路では、手水、本堂、大師堂、納経所等に複数のタイプの杖立が奉納され、活用されている。だがこのような杖立がアタリマエのものとして札所に溶け込む風景は他の巡礼や四国の古い写真集には確認できない。このことから、杖立は杖を弘法大師の化身と見なす四国で、近年、杖に対する感覚が変化したことで登場した新しい巡礼文化の要素であり、弘法大師への現代的敬意の具現化したモノであると指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
延期されていた巡礼イベントの調査が実施できたこと、また前年度における先行研究の整理に続き、今年度は四国遍路と観音巡礼の比較の視点から研究発表と論文執筆を行ったことなど、一部の調査計画に遅れがあるものの概ね順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
四国霊場、高野山、篠栗八十八ヶ所など、空海に関連する聖地や真言宗寺院における弘法大師御誕生1250年の実施状況の調査を行う。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響で一部予定していた調査ができなかったことで次年度使用額が生じた。延期した調査を2023年度の研究計画に組み込むかたちで使用する。
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Research Products
(2 results)