2021 Fiscal Year Research-status Report
Fusion and Creation of Immigrants' Religion in the Multi-Ethnic Country: Hinduism and Chinese Religion in Malaysia
Project/Area Number |
21K01063
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Research Institution | Kaichi International University |
Principal Investigator |
古賀 万由里 開智国際大学, 国際教養学部, 教授 (20782345)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ヒンドゥー教 / 華人宗教 / マレーシア / シンクレティズム |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究計画の一つである、中国の弥勒菩薩信仰とインドのクベーラ神信仰のシンクレティズム現象の分析に関しては、コロナの影響で現地調査が実施できなかったため、以前に収集したデータに加え、新たに収集した情報およびオンラインやSNSによるインタビューから分析を進めた。ヒンドゥー教と華人宗教のシンクレティズムはマレーシアのみならずシンガポールにも見られるため、シンガポールの寺院に関しても資料を収集した。その結果、ラッフィングブッダ(弥勒)、クベーラ神、ガネーシャ神は由来や性質が異なるものの、東南アジアのインド系住民と華人の両方に信仰されているのは、以下の要因によることが分かった。①外見上の類似性か同一視される(図像的類似性)、②ヒンドゥー教と華人宗教には、多神教という共通性があり、化身の概念で本来は別々の神が同一視される(教義的類似性)、③憑依という形式を伴う儀礼が多い(儀礼的類似性)、④財という現世利益を重視する華人宗教が、特定のヒンドゥー神を財の神として取り入れた(資質的類似性)。 当初の予定では、マラッカに存在するヒンドゥー様式と中国式の建築物、崇拝対象が混合している実態を、祭祀の参与観察や寺院関係者からの聞き取りにより分析し、ヒンドゥー教と華人宗教が混合している過程を明らかにしようとしていた。しかし、コロナによる渡航制限により、現地調査を実施することができなかった。代わりに、マレーシアとシンガポールの寺院についてインターネットやSNSを用いて情報を収集して、民族による参拝の傾向や司祭の民族、礼拝様式、寺院様式、習合される神格の特徴について傾向があることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画上は、マレーシアに渡航し、マラッカのチンディアン寺院(ヒンドゥー教と華人宗教が融合した寺院)を訪れ、参与観察やインタビュー調査を行なう予定であったが、コロナの影響により現地調査を実施できなかった。そのため、既存の資料や先行研究、インターネット、オンラインやSNSにより集められたデータを分析し、ヒンドゥー教と華人宗教のシンクレティズムの特徴を見出した。シンクレティズムの形態や動態に関する議論を参照に、東南アジアのコンタクトゾーンで生じる宗教融合現象のモデル化を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後コロナが完全に収束することはなくとも、渡航の制限を少なくしている国が増え始めたことから、現地調査を実施できる可能性が出てきた。調査を実施する前に、入手可能な資料を収集して分析し、シンクレティズムのモデルと条件を仮説として提示する。そして現地調査を行った上で、その仮説の妥当性を検証する。ヒンドゥー教と華人宗教が融合している寺院が多い国としては、マレーシアの他にシンガポールが挙げられる。今後はシンガポールのチンディアン寺院や華人ヒンドゥーも視野に入れ、研究を進めていく。
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Causes of Carryover |
調査地ではコロナの感染拡大の影響で、渡航が制限されていたため、調査を断念せざるを得なかった。そのため旅費としての支出がなくなり、次年度使用額が生じた。次年度は渡航の規制が弱まり、調査を実施できる可能性が高いことから、渡航費や滞在費、調査代などを含む旅費を中心として使用したい。
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Research Products
(3 results)