2022 Fiscal Year Research-status Report
Fusion and Creation of Immigrants' Religion in the Multi-Ethnic Country: Hinduism and Chinese Religion in Malaysia
Project/Area Number |
21K01063
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Research Institution | Kaichi International University |
Principal Investigator |
古賀 万由里 開智国際大学, 国際教養学部, 教授 (20782345)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ヒンドゥー教 / 華人宗教 / マレーシア / シンガポール / シンクレティズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、英領マラヤに移住してきたインド人と中国人が、独自の宗教文化を形成し発展させる過程において、寺院形態や神格、礼拝様式などが部分的に重なるというシンクレティズムの動態を明らかにすることである。そのため、2022年の8月には、マレーシアでも華人とインド系移民が多い、マラッカ、ペナン、クアラルンプールで、ヒンドゥー教と華人宗教の神々が一緒に祀られている寺院の調査を実施した。特にマラッカのチンディアン寺院では、華人とヒンドゥー教徒との協力体制と融和が見られた。寺院の関係者や信者らにインタビューを行い、両神々が祀られるようになった経緯や神々の関係、祭礼の形態、委員会組織、信者層などを把握できた。 また2023年3月には、シンガポールで、華人が参拝するヒンドゥー寺院や、ヒンドゥー神を祀る華人寺院の調査を行った。ガネーシャ神が華人にとっては財神として崇拝されており、ヒンドゥー教徒とは異なる形式で礼拝されていた。また、シンガポールは人口に対する国土が狭いため、経済的状況、特に土地所有の問題が宗教習合に関係していることが分かった。 両調査により、調査目的である、ヒンドゥー教と華人宗教のシンクレティズムが起こる原因と過程がいくつか明らかになってきた。原因としては、①両宗教とも多神教であり、他宗教に対して寛容であること、②共通の活動(憑依、託宣など)があるなどの親和性が見られることがあり、過程としては、①開発のための行政の指導による移動、③経済的問題から、土地や建物を共有するようになるといったことがあることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
21年度はコロナで調査地への渡航が叶わず、一次資料を入手することが困難であった。それに対して22年度は、マレーシアとシンガポールでの調査を実施に、研究対象であるヒンドゥー・華人宗教習合寺院を調査することができた。マレーシアでは調査対象の寺院関係者らから必要な情報を収集し、仮説を検証することができた。また、マレーシアと同様にヒンドゥー教と華人宗教の習合が見られるシンガポールの寺院を調査することにより、シンクレティズムの実態がより明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
22年度は、通常の日(祭礼日ではない日)に寺院の調査を行ったが、今後は、中元節(8月終わりから9月初め)や寺院祭礼の日にマレーシアとシンガポールへ行き、実際の祭儀の仕方や人々の礼拝の仕方などを調査する予定である。また、22年度に調査した寺院を再訪し、関連寺院関係者や信者をインタビューし、信仰・実践や寺院の宗教形態をより明らかにする。さらにシンクレティズムが生じている現象を、社会の政治や経済状況と関連づけて考察したい。
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Causes of Carryover |
3月に海外出張を行い、クレジットカード使用のものは明細が出せず、決済ができなかったことと、初年度はコロナで調査に行かれなかったため、次年度使用額が生じた。実際に昨年度使用した額を差し引くと、次年度に使用できるのは、133,212円である。次年度は海外調査を2回以上行うことにより、全て使用する予定である。
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