2021 Fiscal Year Research-status Report
「縁結び」とコミュニティ構築に関する比較研究:日本とチベットの事例から
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21K01067
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Research Institution | Kanazawa Seiryo University |
Principal Investigator |
小西 賢吾 金沢星稜大学, 人文学部, 准教授 (80725276)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 縁 / 共同性 / 宗教 / 偶然性 / チベット / 日本 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、現代チベット社会における宗教実践を通じたつながりの構築メカニズムを、日本における「縁結び」文化との比較研究から解明することを目的とする。 チベットのボン教徒における「結縁」、そして日本の「縁結び」に関わる宗教実践とその社会的位置づけを検討することで、他者との出会い(邂逅)がいかに共同性を構築するのか、それは既存のコミュニティといかに関わるのかを明らかにする。 1年目である2022年度は、研究の基盤となる理論的視座を構築するために、民族誌資料の通文化的な検討と、日本における縁結び文化に関する資料の収集と分析を行った。前者では、縁に相当する概念がどのような広がりをもっているのか、つながりの構築に個人の主体性と神などの超自然的存在、そして具体的なモノや儀礼がどのように関わっているのかに着目しながら調査を進めた。また、後者においては出雲神話や道祖神信仰との結びつきをはじめ、説話や小説などに登場する縁結びの用法も含めた幅広い観点からの調査を行った。加えて、日本国内における縁結びや縁切りで知られる神社仏閣についてデータベースの作成を開始し、一部の神社については予備的なフィールド調査を実施した。 以上から、縁の概念自体は仏教由来であるにも関わらず、実際には神道や土着の信仰など、地域固有の要素と密接に関係しながら展開してきたこと、また多様な民族誌資料の中にも、つながりに関わる儀礼には大きな宗教的伝統に回収できないものが多く存在することが明らかになった。こうした知見を次年度以降、フィールド調査における知見と組み合わせながら比較検討していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画の遂行にあたっては、新型コロナウイルス感染症の現地調査実施への影響を見込んだ上で慎重に研究を進めている。2021年度は文献調査が主体となったが、次年度以降の現地調査の基盤となる知見を順調に蓄積することができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は感染状況を見極めつつ、徐々に現地調査の実施を拡大していきたい。特に、日本国内での縁結びに関わる習俗や施設などについて、網羅的な把握を目指す。チベットに関する調査は、オンラインでのインタビューなども含めて積極的に実施する。並行して、「偶然の出会い」に関わる理論的文献の読み込みを行う。以上を踏まえて、研究成果の公表につとめる。
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Causes of Carryover |
当初の研究計画で想定していた現地調査が、新型コロナウイルス感染症の影響によって実施困難になったため、次年度使用額が生じた。次年度は、感染状況を慎重に見極めつつ、現地調査による資料収集に努めるとともに、文献調査、オンライン調査を複合的に活用しながら研究を進める。
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Research Products
(1 results)