2023 Fiscal Year Research-status Report
A brief study on Methods used in Photo-ethnographic modeling
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21K01070
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Research Institution | Himeji Dokkyo University |
Principal Investigator |
岩谷 洋史 姫路獨協大学, 人間社会学群, 講師 (00508872)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
花村 俊吉 京都大学, アフリカ地域研究資料センター, 特任研究員 (30727178)
田原 範子 四天王寺大学, 人文社会学部, 教授 (70310711)
岡田 浩樹 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (90299058)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | フィールド体験 / エスノグラフィー / エスノグラフィック・フォトグラフィー / フォト・エスノグラフィー |
Outline of Annual Research Achievements |
①文献資料収集。エスノグラフィック・フォトグラフィー(民族誌学的写真術)の探究のための文献資料の収集を行った。②フォト・エスノグラフィーの実践。岩谷は主に商品の価値付けを探究する観点から清酒製造現場や商品が流通する国内外の場において、花村は人間とニホンザルとの相互関係を理解する観点から瀬戸内海島嶼部のフィールドで、田原は人びとの生活世界を描写することを目指し、ガーナやウガンダでのフィールドにおいて、フォト・エスノグラフィーの実践を行い、成果物を作成した。③学部・大学院生向け調査実習の運営。岡田はフォト・エスノグラフィーの手法を採用した調査実習等を運営しているが、自身が所属する大学以外の集中講義(調査実習)でも、この手法を採用し、作成された実習成果物を査定することで課題を整理した。④他分野の研究者との連携と研究会の開催。文化人類学分野以外の他分野の研究者とも連携し、研究体制の基盤の強化を図りつつ、研究会(オンライン形式)を3回開催した。第1回目(2023年06月07日)では、田原と花村が各自のフィールドでのフォト・エスノグラフィーの実践を具体的に紹介した。第2回目(2023年12月28日)は、岡田が担当する集中講義での発表会に他研究メンバーも参加して、受講生らの成果物を検討していく機会とした。第3回目(2024年01月08日)では、岩谷、田原、花村によるフォト・エスノグラフィーの実践による成果物を検討し、課題を整理した。一方、本研究活動を基盤に、国立民族学博物館での共同研究(研究課題名:フォト・エスノグラフィーの実践に関する方法論の検討、代表者:岩谷洋史、期間:2023年10月から2026年3月まで)を開始し、相互に連動する形で研究活動を推進させた。⑤研究成果の公開。生態人類学会第29回研究大会で岩谷のフォト・エスノグラフィーの実践の具体例に関する研究成果報告等を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2023年度は、新型コロナウイルス感染症の蔓延による行動制限はほぼ解除される形となり、研究代表者(岩谷)、及び研究分担者(田原、花村)が各自のフィールド(国内外)でフォト・エスノグラフィーの実践を行うことができるようになった。各自のフィールドにて、資料として活用する写真を取得することができ、前年度までに構築した基本的な枠組みに沿う形で、各々がその実践の成果物を作成した。フォト・エスノグラフィーの実践の具体的なプロセスを事例としつつ、基本的な枠組みに関する学術論文として提示することが今後の課題であるが、論文執筆の進捗状況は遅れぎみと言える。その大きな理由として、2023年度は、研究協力者を含む、研究活動に参画するメンバー間で、研究会(オンライン形式)を通じてフォト・エスノグラフィーに関する議論を重ねたものの、新たな課題も見出され、いまだ、基本的なモデル構築に不可欠となる概念定義については、メンバー間で合意に至っているとは言えないことが挙げられる。調査者のフィールド経験を再構成する方法やプロセスに焦点を当てた考察は研究活動を開始してから行ってきたものの、エスノグラフィック・フォトグラフィー(民族誌学的な写真術)を含めた、写真撮影、及び、取得される写真それ自体の特性(特に画像と言語の関係)についての考察が十分にできていないところが大きいと言える。引き続き、先行研究に関する文献資料の収集、および、その資料のメンバー間での読解と理解を通じて、と同時に、研究協力者として参画してもらう国内の関連研究分野の研究者との連携を軸にした専門知識の提供や議論を通じて、研究課題を達成する方向へと目指したい。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、関連する先行研究の把握のための文献資料の収集、構築した関連分野の国内外の研究者との連携を基盤にした、研究会の開催(オンライン形式を中心にして、年間3回開催を予定)、及び、電子メールなどを含むコミニケーションツールを介して、研究代表者・研究分担者・研究協力者間で議論を展開していく計画を策定している。なお、この計画は、2023年度から開始された国立民族学博物館との共同研究と連動させる形で、推進させていく。今後の研究で検討すべきことは、構築したフォト・エスノグラフィーの基本的な枠組みを念頭に置きつつ、①フォト・エスノグラフィーの実践によって作成される成果物を他者と共有できる形で提示する方法、②エスノグラフィック・フォトグラフィー(民族誌学的な写真術)を含めた写真撮影の方法、③生成される写真それ自体の特性(特に、画像と言語の関係)などに対して当てたい。そうした議論を踏まえた上で、フォト・エスノグラフィーのモデル化を精緻にし、理論的な深化を図っていく。一方で、研究成果の公開に関しては、これまでの研究活動で得られた新たな知見を整理した上で、学術論文執筆を射程に入れた上での本研究活動の研究成果を国内学会にて行っていく。今後、万が一、研究が計画通りに進まない時など研究代表者、研究分担者、 さらには研究協力者間で意見交換をしながら、計画の進行の調整、修正、及び、改善などを含め、常に柔軟な姿勢で対処していきたい。
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Causes of Carryover |
当初、対面式の研究会の開催や主に研究者ネットワークを拡大するための目的で海外渡航を念頭に予算計画を立てていたが、2023年度も共同研究者や研究協力者の多くが参加し、議論ができるように、研究会(合計3回)についてはオンライン形式をとって開催したこと、前年度に引き続き、海外ではなく国内での研究者ネットワークの拡大の方に重点を置いたことなどのために、海外等の遠隔地への出張旅費の使用が縮小した。このために次年度使用額が生じている。これについては、次年度に繰り越して、本研究計画を実現するため、特に、海外渡航の旅費支出に当てる計画を策定している。
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