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2022 Fiscal Year Research-status Report

The transfiguration of lifeworlds at the margin of the global nuclear energy development network

Research Project

Project/Area Number 21K01076
Research InstitutionTokyo University of Foreign Studies

Principal Investigator

内山田 康  東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 研究員 (50344841)

Project Period (FY) 2021-04-01 – 2024-03-31
Keywords核実験 / 生活世界 / 権力 / 力能 / 国家理性 / 無知
Outline of Annual Research Achievements

2022年9月から10月までの2ヶ月間、フランス領ポリネシアで2度目のフィールドワークを行い、前回と同様に7週間、ガンビエ諸島のマンガレヴァ島で過ごした。リキテアのある家族が所有する小屋に住みながら、核実験場で働いた人たち、その家族たち、また家族を被曝のために亡くした人々から話を聞いた。島の地理についてよく知るために、マンガレヴァの尾根を走るトレイルのレースの長い方(39キロ)に出場し、島の全ての人たちに知られるようになったことは、その後に調査を続ける上で、とても役に立った。マンガレヴァには二つのブロックハウスが存在していたが、フランス政府に対する被害者の救済の要求およびそのための調査が始まった2005年の後、これらの核実験の遺物は撤去され、核実験の記憶の風化が一気に進んでいたことが判明した。
島の人々が核実験について語り始めたタイミングで、核実験の施設の遺跡が景観から消されたことは、この歴史的な出来事の記憶を消すためのフランス政府による介入が行われたと考えられる。調査の観点から考えると、物質的な証拠が無くなったため、事実について確かめることが困難になっている。また、2005年から一気に進み始めたと思われた、核実験の被害およびより広い影響に関する調査は、様々な物質的な証拠が処分されたため、困難に直面していた。1966年から1974年まで行われた大気中核実験が行われた時代に、CEA (フランス原子力庁)、CEP(太平洋実験センター)、フランス軍に雇用されたポリネシア人たちは、70代になっており、死んだ人たちも多い。核実験に関連した様々な施設は、フランス軍によって解体され撤去され、環礁のどこかに埋められたが、急いで行われたために残骸や瓦礫は少し残るものの、大きな施設は全て不可視化されている。また国家の秘密の壁に阻まれ、核実験の事実に関する記録にはアクセスできないままである。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

1: Research has progressed more than it was originally planned.

Reason

フランス領ポリネシア、ガンビエ諸島のマンガレヴァにおける調査は、非常に充実したものとなった。2022年9月11日に行われたマンガレヴァトレイルの島の全ての尾根を走る39キロのレースに出て、島の人々に走る姿を見られ、また最高齢の感想者として表彰されて、島の全ての人々に知られるようになったからだろう。人々は私に興味を持ち、どこに行っても声をかけられるようになった。そのために様々な人たちに話を聞くことが容易になった。
調査の結果は、福島の浜通りの原発事故に関心を持つ人びとが読む、「日々の新聞」において1ヶ月に2回のペースで連載を執筆しており、2022年度はフィールドワークの期間を除き20回書いてコミュニケーションを図った。2022年12月4日には広島市において日本文化人類学会主催のシンポジウム「原子力マシーンとちっちゃいこえ」で進行中の研究の報告を行なった。

Strategy for Future Research Activity

グローバルな原子力開発における周縁の生活世界の変容について、核実験の様々な影響を受けた福島の浜通りから調査を開始し、フランスのラ・アーグの再処理工場の近隣の生活世界、イギリスのセラフィールドの再処理工場の近隣の生活世界、ガボンのムナナのウラン鉱山に囲まれた生活世界、そして核実験場に近いフランス領ポリネシアのガンビエ諸島で調査を行い、それぞれの地域に固有な状況だけでなく、グローバルな原子力マシーンの中枢から同じ人々が訪れていること、同じ制度的な制約があることが明らかになってきた。この非対称性、すなわち原子力開発と核のごみが捨てられる場所の非対称性、核弾頭と核実験場の非対称性は、他の様々な非対称性と同じ形をしていると考えられる。
本研究において、私はフランス領ポリネシアのガンビエで人類学的な調査を行いながら、その研究の過程を発信する活動を続けてきた。3年目は、核開発を主導してきた中心的な諸制度と、それらが実験場、核のごみの処理場、あるいは緩衝地帯として使ってきた周縁の多様な生活世界との関係から、どのようなパターンが見出されるのかについて比較研究をすることに力を注ぎたい。

Causes of Carryover

円安のために19万円の残金で2度目の調査を行うことはできなかったので、次年度に繰り越すことにした。

  • Research Products

    (21 results)

All 2023 2022

All Journal Article (20 results) Presentation (1 results) (of which Invited: 1 results)

  • [Journal Article] 戸惑いと嘘90 遠くから島を振り返る4「王のように振る舞う泥棒のルール」2023

    • Author(s)
      内山田康
    • Journal Title

      日々の新聞

      Volume: 476 Pages: 2-3

  • [Journal Article] 戸惑いと嘘91 遠くから島を振り返る5「核実験場のリゾートでヴァカンス」2023

    • Author(s)
      内山田康
    • Journal Title

      日々の新聞

      Volume: 477 Pages: 2-3

  • [Journal Article] 戸惑いと嘘92 遠くから島を振り返る6「素晴らしさを媒介する巨大な仕掛け」2023

    • Author(s)
      内山田康
    • Journal Title

      日々の新聞

      Volume: 478 Pages: 2-3

  • [Journal Article] 戸惑いと嘘93 無知の発展について1「命令されたことを考えずにやった」2023

    • Author(s)
      内山田康
    • Journal Title

      日々の新聞

      Volume: 479 Pages: 2-3

  • [Journal Article] 戸惑いと嘘94 無知の発展について2「自己を肯定して独立を求めて生きる」2023

    • Author(s)
      内山田康
    • Journal Title

      日々の新聞

      Volume: 480 Pages: 2-3

  • [Journal Article] 戸惑いと嘘95 無知の発展について3「フランス兵たちも無知だった」2023

    • Author(s)
      内山田康
    • Journal Title

      日々の新聞

      Volume: 481 Pages: 2-3

  • [Journal Article] 戸惑いと嘘96 無知の発展について4「診療ノートをもっているようですね」2023

    • Author(s)
      内山田康
    • Journal Title

      日々の新聞

      Volume: 482 Pages: 2-3

  • [Journal Article] 戸惑いと嘘77 神の死と主権の秘密3「権力は美しい姿で現れて魅惑した」2022

    • Author(s)
      内山田康
    • Journal Title

      日々の新聞

      Volume: 459 Pages: 2-3

  • [Journal Article] 戸惑いと嘘78 神の死と主権の秘密4「勇気があっても問題はそのまま」2022

    • Author(s)
      内山田康
    • Journal Title

      日々の新聞

      Volume: 460 Pages: 2-3

  • [Journal Article] 戸惑いと嘘79 神の死と主権の秘密5「二つの国旗が交差する意匠のある墓」2022

    • Author(s)
      内山田康
    • Journal Title

      日々の新聞

      Volume: 461 Pages: 2-3

  • [Journal Article] 戸惑いと嘘80 神の死と主権の秘密6「戦争機械は国家装置をも動かす」2022

    • Author(s)
      内山田康
    • Journal Title

      日々の新聞

      Volume: 462 Pages: 2-3

  • [Journal Article] 戸惑いと嘘81 見え隠れする痕跡たちの間で1「大変動は核実験以前に始まっていた」2022

    • Author(s)
      内山田康
    • Journal Title

      日々の新聞

      Volume: 463 Pages: 2-3

  • [Journal Article] 戸惑いと嘘82 見え隠れする痕跡たちの間で2「主権/至高性の根源にある例外性」2022

    • Author(s)
      内山田康
    • Journal Title

      日々の新聞

      Volume: 464 Pages: 2-3

  • [Journal Article] 戸惑いと嘘83 見え隠れする痕跡たちの間で3「トタンの家と二本マストのヨット」2022

    • Author(s)
      内山田康
    • Journal Title

      日々の新聞

      Volume: 465 Pages: 2-3

  • [Journal Article] 戸惑いと嘘84 見え隠れする痕跡たちの間で4「それほど馬鹿げたことはない」2022

    • Author(s)
      内山田康
    • Journal Title

      日々の新聞

      Volume: 466 Pages: 2-3

  • [Journal Article] 戸惑いと嘘85 見え隠れする痕跡たちの間で5「ローズ・ギヨーは何に抵抗したのか」2022

    • Author(s)
      内山田康
    • Journal Title

      日々の新聞

      Volume: 467 Pages: 2-3

  • [Journal Article] 戸惑いと嘘86 見え隠れする痕跡たちの間で6「偉大なフランスとちっぽけなポリネシア」2022

    • Author(s)
      内山田康
    • Journal Title

      日々の新聞

      Volume: 468 Pages: 10-11

  • [Journal Article] 戸惑いと嘘87 遠くから島を振り返る1「批判の距離を保って記述する試練」2022

    • Author(s)
      内山田康
    • Journal Title

      日々の新聞

      Volume: 473 Pages: 4-5

  • [Journal Article] 戸惑いと嘘88 遠くから島を振り返る2「沈黙させるお金を拒んでどうする?」2022

    • Author(s)
      内山田康
    • Journal Title

      日々の新聞

      Volume: 474 Pages: 2-3

  • [Journal Article] 戸惑いと嘘89 遠くから島を振り返る3「核実験が始まる前に破壊があった」2022

    • Author(s)
      内山田康
    • Journal Title

      日々の新聞

      Volume: 475 Pages: 2-3

  • [Presentation] フランスは偉大でポリネシアはちっぽけ2022

    • Author(s)
      内山田康
    • Organizer
      原子力マシーンとちっちゃいこえー文化人類学者と詩人の対話、日本文化人類学会
    • Invited

URL: 

Published: 2023-12-25  

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